今年度、全国の56校が国から「スーパーグローバルハイスクール」(SGH)に指定された。そのうちの1校、神戸市立葺合高校(西尾勝校長)の生徒たちは、2年後に海外の高校生を招いた「四大陸高校生サミット」を自校で開催するという目標を掲げ、勉強に励んでいる。

同校の目標は、「子ども」をキーワードに、世界の人権、環境、経済の問題を学び、生徒が自分たちにできることを考えることだ。そのために始めた独自の教科「グローバルスタディーズ」の授業を訪ねた。

「世界放浪」が授業の題材

 

「エアーズロックに行ったことのある人。ここはアボリジニの聖地。観光客には登らせているけれど、京都の寺にある池で外国人を泳がせたら…と考えるとおかしいよね」

1年生の国際科のクラスでは、定時秀和先生(地歴公民)が黒板に世界地図を描きながら、身振り、手振りをまじえて解説していた。生徒の手元には地図帳。この日のテーマはオーストラリアだ。

「日本がオーストラリアなどと交渉しているのは?」。生徒に問いかけながら、TPPなどの貿易協定について説明する。女子生徒の一人は「先生が若い頃に世界を旅した実体験をまじえてくれるのがいいです」と話した。

定時先生の授業では、1学期に世界の国々の現状を、2学期に南北問題などを学び、3学期はフィリピンの歴史や風土、台風被害について勉強する。

映像で「児童労働」を知る

 

コンピューターを使って語学を学べるCALL教室では、生徒たちが、「児童労働」をテーマにした映像を視聴しながら、プリントの問題に答えていた。一段落すると、同じテーマを扱った英文を読む。茶本卓子先生(英語)とサミュエル・バート先生(ALT)が教室を見て回る。先生の問いかけも、生徒の答えも全て英語だ。

この授業では、1学期は子どもをめぐる問題などを学び、2学期は環境や人権についてのスピーチを扱う。3学期にはフィリピンの高校生とインターネットで意見交換をする。

1年生の学年末に生徒の代表によるフィリピンでのフィールドワークを計画しており、2つの授業ともそれをふまえたカリキュラムとなっている。

2年後に「四大陸サミット」

2年生では、海外の姉妹校とのテレビ会議や代表生徒の姉妹校訪問を行い、3年生で姉妹校を招いた「四大陸高校生サミット」を学校で開催する。そこで、世界の共生を目指した提言をまとめ、それを実行するためのNPOを設立するという大きな目標がある。

生徒有志が、学びを深めるための研究会も結成。参加した女子生徒は「他の高校の生徒や大学生、中学生や街頭の人など、いろんな人に世界についてアンケートして意見を聞きたい」「ボランティア活動や募金活動、コンテストにも積極的に参加したい」と意欲を見せた。

スーパーグローバルハイスクールとは 全国で56校が指定

 

スーパーグローバルハイスクール(SGH)には、全国の246校が応募した。文科省の審査を経て選ばれたのが、表の56校だ。指定期間は5年間、各校とも年間1000万円以上の予算が国から交付され、高校生を未来の「グローバルリーダー」に育てる。大学と連携した授業や、生徒がテーマを設定して研究する「課題研究」を実施するほか、海外でのフィールドワークや研修旅行を計画している高校も多い。