世界の「難民」は約6千万人――。今、シリア難民など、急増する難民問題が注目されている。日本にいる難民の生活や手続きを支援する認定NPO法人難民支援協会には、多くの難民申請者が訪れる。日本に来た難民はどんな事情を抱え、どんな生活をしているのか。支援事業部の田多晋さんに聞いた。
(馬島利花)
難民支援協会に聞く
――難民とは、どのような人たちですか?
田多 難民条約(メモ参照)で「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見を理由に迫害を受ける恐れがあり、その国籍国の保護を受けられず(望まず)、他国に逃げてきた人」と定義されています。
――日本にもいますか?
田多 2014年、日本政府に難民申請をした人は5千人。政府から難民認定を受けた人は11人でした。当協会を訪れるのは、とりわけ困窮度の高い人たちです。その約半数はアフリカの人です。
難民申請者には、政治的な意見を述べたり、特定の宗教を信仰したりすることで、政府から迫害されたなど、多様な背景があります。アフリカの人の場合、最近増えているのは同性愛者です。法律的な規制に加え、国民感情として強い差別意識が根強いのです。
――日本でどんな生活をしているのですか?
田多 来日直後は就労が認められず、困窮した生活を送る人がほとんどです。難民申請者同士でコミュニティーをつくるなどして生活しています。在留資格がない人は仕事も出来ず、病院に行くことすら難しい状況で、住む場所に困る人も少なくありません。
――難民認定を受けるには?
田多 ビザを持って入国した場合は、政府から在留資格を得て、その期限内に難民申請をし、書類やインタビューで自らが難民であることを証明します。ビザなしで入国した場合は、最初に短期ビザ(最大90日)を申請し、同様の手続きを行います。
――認められなかったら?
田多 人道上の配慮により、政府が在留許可を出す場合があります。ただし、難民認定ではないので、日本語や就職の公的なサポートがない、家族を日本に呼ぶ手続きが難しいなどの課題があります。私が最近支援したシリア人は、家族と再会できるまで2年半もかかりました。
――日本の支援の課題は?
田多 一つは、難民認定率が低すぎること。韓国で約5%、英国が約30%なのに対し、日本は0.2%と、際立って低水準です。
もう一つは、難民申請手続きの長期化です。申請後、審査結果が出るまでに半年以上、異議申し立てなどをすれば平均で3年かかります。その間、在留資格のない難民申請者は保険に入れず、病院に行けないこともあります。今後、国のサポートが強化され、安心して生活できる環境が保障されることを期待します。