田中立夏さん(大阪・帝塚山学院高校3年)の写真作品「馬の命」を紹介します。馬のひづめに蹄鉄(ていてつ)を打つ技術者をとらえたこの作品は、全国高校総合文化祭(2023かごしま総文)の写真部門で、文化庁長官賞(最優秀賞のうちの一つ)を受賞しました。どのように撮影したのか聞きました。

馬の命(第47回全国高校総合文化祭 かごしま総文2023 写真部門・文化庁長官賞)

馬の命を守る「装蹄師」を撮影

―作品のテーマを教えてください。

私は乗馬クラブに通っているのですが、普段から装蹄(そうてい)師さんの装蹄の作業を見るのが好きで、よく見に行ってお話ししています。馬のことを誰よりも深く教えてくれて、私はその話を聞くのが大好きです。

装蹄の写真を撮り始めて少したったある時、爪が割れていると体調が良くないこと、馬は体のつくりの関係で心臓の動きだけでは全身に血液をいきわたらせられず、その助けをしているのが足だということを知りました。

「馬の命」を撮影した田中立夏さん

歩けない状態になると古い血が足にたまり、痛みを伴って全身にうまく血を回していけなくなり、死んでしまうそうです。馬にとって何より大切な足を守る装蹄師さんの仕事は、馬の命を守る仕事であると思いました。そのような意味も込めて「馬の命」と名付けて、装蹄師さんをテーマに選びました。

早朝に差し込むわずかな光をとらえ

―こだわったり、工夫したりしたポイントは?

装蹄所は暗い場所なので光があまりありません。なので、その場所に差し込むわずかな光を読んで陰影を観察しました。緊張感のある現場の空気感を出せるように、できる限り馬と装蹄師さんに近づいて、ズーム機能はなるべく使わず自分が被写体に寄って撮ることを工夫しました。

―難しかったところは?

馬は生き物なので、こちらが動かないでほしい時でも自由に動く時もあって、イメージしているように撮ることが難しかったです。さらに装蹄師さんの作業は朝早くに終わってしまうので、薄暗い中でかぎられた光を取り入れる必要がありました。寒い日だったこともあって、手がかじかんでくるのを止めながら撮影しました。

「楽しく撮れたなら良い写真」

―撮影中のエピソードを教えてください。

装蹄中の馬を撮影している中、装蹄されるのが苦手そうにしている子や、カメラに興味津々の子たちがずっと凝視してくるのが面白かったです! 最初に述べた通り、馬の脚を守る装蹄師さんのお話にも感動して心動かされました。

―よい作品を作るためのコツを教えてください。

これといってありません。あえて言うなら、うまく撮ろうと思わずにいっぱいシャッターを切ることと、カメラと行動を共にすることです。自分にとってよい写真が人から見ていいとは限らないし、自分が楽しく撮れたなら良い写真だと思います。