進徳女子高校(広島)には、捨てられた犬・猫の新しい家族を探す、全国でも珍しい部活がある。譲渡会は普及してきたものの、全ての動物の飼い主がすぐには見つからない。保護犬・猫に寄り添う部員たちの葛藤を追った。(文・中田宗孝、写真・学校提供)

保護犬・保護猫を世話し寄り添う

同校のWDP(Walking with Dogs Project)部は、動物愛護活動を行う部活だ。部員たちは放課後、自転車で約10分の距離にある広島市動物愛護センターを訪れ、保護されている動物への餌やりやゲージの掃除などを行っている。センターにいるのは、飼い主に捨てられたり病気を患っていたりと、事情を抱えた犬や猫だ。

周囲の安全に十分配慮して複数人の部員が付き、声を掛け合いながら保護犬の散歩を行う

犬や猫に対する学びも欠かさない。例えば、ドッグトレーナーを講師に迎えたセミナーを定期的に実施。部員は大型犬から小型犬までさまざまな犬と触れあいながら、正しい抱っこの仕方や嫌がらせずに首輪を付ける方法などを学び、犬への理解を深めていく。

ドッグトレーナーによる校内セミナー

副部長の吉本こころさん(2年)は、犬の行動を理解していくうちにテレビ番組に登場する犬たちの挙動が気になりだしたという。「おもしろ犬特集」という番組の企画で、体を震わせる犬やあくびをする犬を見て、「これらの行動は強いストレスを感じているサインかもしれないんです。もしかしたらこの子たちは、本当は嫌がっているんじゃないかと思うこともあって……。やめてほしいなと思うことが増えました」。

部員の吉本さん(左)と東家さん

子犬、子猫ばかりがもらわれて

保護犬・保護猫を「幸せになってもらえる家庭に送り届けたい」という思いのもと、部では定期的に譲渡会を開催している。

6月の譲渡会には200人超が来場し、犬2匹の譲渡が決定。6匹の猫がトライアル(短期間のお試しで里親の家で暮らすこと)へと進んだ。

校内で開かれた犬猫譲渡会の様子。会当日は保護犬・保護猫のための募金や、未開封の犬猫用フードなどの支援物資も募っている

だが吉本さんは、「よい譲渡会だったとは思えないんです。大勢の人に見られ続けながら頑張ってくれたすべての犬猫たちに新しい家族を見つけてあげられなかった……。その悔しさがある」と肩を落とす。

成犬や成猫は子犬や子猫に比べて里親が見つかりにくい。黒猫や、黒と茶色の毛が混ざり合った「さび猫」のように、毛の色によって残りやすい猫もいる。これも現実だ。

「成犬は免疫力が高く体調を崩しにくいです!」「静かに寝ていることが多い成猫なら安心して留守番を任せられます!」「成長して性格が落ち着いている成犬や成猫は初めてペットを飼う人に適してます!」。部員たちも譲渡会に訪れた人たちとの対話や掲示物を通じて、新たな飼い主が見つかるよう尽くしたが、新たな飼い主に出会えなかった犬や猫の方が多かった。

譲渡会場に掲示した手づくりのポスター。成猫を飼う魅力や、猫の種類ごとのアピールポイントをまとめた

吉本さんが気にかけていた14歳の老犬・ハチも残った。「シニア犬の魅力を伝える紹介文をもっと工夫できたんじゃないか。私自身、来場者の方々に積極的に話し掛けて直接伝えられたのではと感じるんです」

その後「『ハチを迎えたい』と名乗り出る人が現れた」と吉報が届いた。吉本さんは「内心、飼い主が見つかるのかな……、と考えたこともありました。飼い主候補が現れたと聞いたときはうれしくて」と、涙を流しながら安堵(あんど)の声を漏らした。

ペットを飼う際は覚悟を持って

保護された犬猫に愛情を注ぎながら向き合う部員たちは、「覚悟を持ってペットを飼ってください」と訴える。「犬や猫の平均寿命は15年。病気にもなるし、シニアの年齢になれば介護が必要になる場合もあります。ペットの介護も付きっきりのお世話になるのでとても大変なんです」(吉本さん)

東家史子(とうげ・ちかこ)さん(2年)は、ペットショップからも飼い主へこれまで以上に説明を行ってほしいと話す。「犬種によってそれぞれ特徴があり、かかりやすい病気も違う。将来的なリスクを、飼い主さんにもっともっと丁寧にしっかり説明してほしい。飼い主さんは正しい知識を付けたうえでペットを飼ってほしい」。彼女たちは、切にそう願っている。

WDP(Walking with Dogs Project)部

2018年創部。部員26人(3年生2人、2年生10人、1年生14人)。週2日活動。動物愛護のNPO団体を運営する顧問の山下育美先生と進徳女子高校の有志生徒によって2012年ごろから活動を始め、その後部へと昇格。文化祭では、保護犬や保護猫への理解を深めるためのステージ発表などを行う。