中央大学は4月から茗荷谷(みょうがだに)キャンパス(東京都文京区)を開設し、多摩キャンパスから移転した法学部の学生ら約5700人が学んでいる。同大は多摩と都心の「2大キャンパス制」を掲げており、学生が減った多摩キャンパスの学部新設の行方も注目される。(文・写真 西健太郎)

中央大学の茗荷谷キャンパス。新校舎は8階建て

茗荷谷駅から1分、英国風の内装も

中央大はかつて都心の駿河台(するがだい)キャンパスを拠点としていたが、1978年に多摩に移転した。法学部が都心に戻るのは45年ぶりとなる。

茗荷谷キャンパスは、東京メトロ・茗荷谷駅から徒歩1分。都バス施設の跡地を東京都から借りて開設した。

新校舎は地上8階、地下2階建て。外装は、中央大学の前身である英吉利(イギリス)法律学校の校舎をモチーフにし、図書館や食堂の内装は英国の法曹院(ミドルテンプル)をアレンジした。教室や研究室のほか、図書館や法曹志望者向けの研究室、トレーニングルーム、屋上庭園などを擁する。予備校関係者は「近年増えている女子の法学部志願者も含めて人気が出そう」と話す。

新校舎内の図書室。屋上庭園が隣接する。低い書架を多くして、居心地がよい空間をめざした

実務家による授業が受けやすく、法曹教育も推進

移転の狙いの一つは、実学教育において「社会と連携しやすくなる」(佐藤信行副学長)ことだ。都心で学ぶことで、自治体や法律事務所で働く実務家による教育も受けやすくなるという。

また、都心にある法科大学院(ロースクール)の教員による授業が開設しやすくなる。法学部を3年で早期卒業して法科大学院に進学する「5年一貫」の法曹養成課程を充実させる方針だ。

新校舎は、屋上からの光が吹き抜けを通して地下まで届く

多摩と都心「2大キャンパス制」へ

後楽園キャンパス(文京区)にある理工学部、市ヶ谷田町キャンパス(新宿区)にある国際情報学部と連携した学部横断型の授業も推進する。自動運転車をめぐる法律問題といったテーマを扱うという。

4月には駿河台キャンパス(千代田区)の地上20階、地下1階建ての新校舎に法科大学院と戦略経営研究科(ビジネススクール)の2つの専門職大学院が移転したほか、法学部の授業や課外活動などに使われる体育施設が小石川キャンパス(文京区)として建てられた。茗荷谷を含む都心のキャンパスに通う学生数は全学の約45%に達し、河合久学長は「(多摩と都心の)2大キャンパス制がスタートした」と話す。

駿河台キャンパスの新校舎は20階建て。ロースクールとビジネススクールなどが入る

学内では「学部再編」も検討

大村雅彦理事長は「諸外国でも、広々として郊外型キャンパスを持つ大学はあり、捨てがたい魅力がある」(2021年12月の記者向け説明会)といい、多摩キャンパスは外国人留学生が日本人学生と交流する国際寮が開設されるなど「緑豊かなグローバルキャンパス」を目指す考えだ。

中央大学は多摩キャンパスと都心キャンパス(茗荷谷・後楽園・市ヶ谷田町・小石川・駿河台)の「2大キャンパス制」をうたう

多摩キャンパスでは現在、経済、商、文、総合政策、国際経営の5学部の学生が学ぶが、法学部移転によって校地の「空き」がある状態。学内では新学部設置を含めた学部再編の検討を進めているといい、その行方が注目される。