私は幼い頃から本が好きで、絵本も含めると何千冊という本を読んできました。今は、本好きが高じて書くことを仕事にしたいと考えています。そんな私が愛読書として必ず挙げる「人生を変えた一冊」は、住野よるさんの『また、同じ夢を見ていた』(住野よる著、双葉文庫、税込723円) です。(高校生記者・桜いをり=2年)

「自分次第で、ハッピーエンド」になる

『また、同じ夢を見ていた』の主人公は、「人生とは〇〇のようなものね」が口癖のおませな小学生・奈ノ花です。彼女は、ある日の国語の授業で「幸せとは何か」について発表することになりました。奈ノ花は、一匹の猫に導かれて3人の女性と出会い、彼女たちと関わっていく中で、「人生」と「幸せ」についてヒントを得ながら成長していきます。

人生を変えてくれた大切な本

この物語には、こんなせりふがあります。

「いいか、人生とは、自分で書いた物語だ」「推敲と添削、自分次第で、ハッピーエンドに書きかえられる」

これは、奈ノ花が出会った3人の女性の中のひとりである、高校生の南さんの言葉です。未来は、自分自身の選択と努力でハッピーエンドに変えられる。そう教えてくれたこの言葉は、ずっと私の心に明かりを灯(とも)してくれています。そして、「こんなふうに、ずっと誰かの心に残り続ける言葉を紡ぎたい」と思わせてくれた、私にとって大切な一節です。

小説と出会い夢が見つかった

私は幼い頃から作文や読書が好きで、この本に出会う前から漠然と「童話作家や小説家になれたらすてきだな」という思いを抱いていました。それが、この物語と、この言葉との出会いによって、はっきりとした輪郭をもつ「夢」になりました。

『また、同じ夢を見ていた』の一節

今は、物語や小説という枠に収まらず、誰かの心に寄り添い、誰かの見える景色を変えるような言葉を紡いでいきたいと考えています。文章を書くことに思い悩んだとき、私が一番に思い出すのは南さんの姿であり、彼女がつづる物語に感動した奈ノ花の姿です。この憧れの気持ちは、ずっと、私の「書きたい」という思いの奥に根付いています。

道しるべのような一冊に

『また、同じ夢を見ていた』は、私の心の奥底にあった「夢」に気づかせてくれた、かけがえのない一冊です。そして、読み返すたびに「自分の思いに真っすぐに、自分の人生を歩んでいく」ことの大切さを教えてくれる、大切なお守りでもあります。この物語を道しるべにして、これからも夢に向かって歩んでいきたいです。