歴史小説は敷居が高い、と感じる人も多いのではないでしょうか。しかし、初心者にも読みやすい歴史小説はたくさんあります。読みやすい順に5冊をご紹介しますので、ぜひ読んでみてください。どれも女性の主人公が活躍する、すてきな作品です。(高校生記者・桜いをり=2年)
能楽の神秘的な世界を楽しめる
『花は桜よりも華のごとく』河合ゆうみ著(富士見L文庫)
能楽をテーマにしたライト文芸作品。弱小の一座を守るため、男装をして女人禁制の能の舞台に立つ少女・白火の成長が描かれています。
特に、白火が舞を舞うシーンに臨場感があり、ひき込まれます。能楽の優美で神秘的な世界観を、存分に楽しめる物語です。少女漫画のような展開もあり、能楽の知識がなくても読みやすい1冊になっています。最初に読む歴史小説におすすめです。
かわいいもの、おしゃれ好きさんにぜひ
「むすめ髪結い夢暦」シリーズ 倉本由布著(集英社文庫)
武家出身の少女・卯野が女髪結いとして成長していく物語です。かわいいものが好き、おしゃれが好き、という方におすすめ。
一人ひとりのお客さんに向き合い、その人にぴったりの髪型を作り上げる卯野を、思わず応援したくなる物語です。恋に悩む気持ちや、少しでもすてきになろうと努力する気持ちは、時代が巡っても変わらないものだと実感できます。
医者目指す少女に「元気もらえる」
「おいち不思議がたり」シリーズ あさのあつこ著(PHP文芸文庫)
主人公は、医者を目指して奮闘する「この世に思いを残した人の姿が見える」少女・おいち。彼女は、さまざまな患者と出会い、さまざまな謎に直面する中で、人として、医者として成長していきます。
真っすぐでけなげなおいちの姿に、明日への元気をもらえる物語です。あさのあつこさんは、児童書なども手がけている作家さんなので、読んだことがある方も多いのではないでしょうか? 緩急のある文章に、一気に惹き込まれます。
江戸を生きる女料理人の奮闘
「みをつくし料理帖」シリーズ 髙田郁著(ハルキ文庫)
ドラマ化、映画化もされた、人情みあふれる人気シリーズです。主人公は、上方から江戸に出てきた女料理人・澪。数々の試練を乗り越えて、料理人として成長していく主人公の姿に心を打たれます。
おいしそうな料理がいくつも出てくるので、食べることが好きな人には特におすすめです。『鬼滅の刃』で注目されるようになった、吉原の世界にも触れられているので、興味のある方はぜひ読んでみてください。
天才絵師のしなやかな生きざま描く
『眩』朝井まかて著(新潮文庫)
絵師・葛飾北斎の娘である、女絵師・応為の生涯を描いた作品です。彼女は、西洋風の陰影表現を習得し、あでやかで寂しげな美人画を描く天才絵師でした。
この作品では、北斎に「美人画ではかなわない」とまで言わせた彼女が絵筆に懸ける想いを、鮮やかに切り取っています。美術に興味がある方には、特におすすめの作品です。歴史小説特有の表現が多く、難易度は高めですが、応為の強くしなやかな生きざまに、はっとさせられる物語です。