強豪として知られる大谷高校軽音楽部(京都)。部員130人を超える大所帯だ。選抜された12人が昨年12月、高校軽音楽部の日本一を決める第1回全国高校軽音楽部大会「we are SNEAKER AGES(スニーカーエイジ)」で初代グランプリに輝いた。「いつも一緒にいる」という優勝メンバーたちに、普段の練習への心構えや工夫を聞いた。(文・写真 木和田志乃)
90分の短時間集中で練習
平日の活動時間は1時間半。地道な基礎練習に力を入れる。バンド練習では、メトロノームを使ってテンポやリズム、音の出だしを正確に合わせることに時間を割く。
個人練習の前にも、正確なリズムを刻めるように同じ楽器を演奏する部員全員でメトロノームに合わせる。
小さい目標を立てて
ベースの栁生大知君(3年)は、高校から楽器を始めた。全国大会では経験のないピック引きに挑戦した。その困難さを「赤ちゃんが生後3カ月で歩くぐらい」と例える。
「まずはこのリズムを練習する、のような小さな目標を持って取り組んでいけば必ず弾けるようになる」という思いで取り組んだ。帰宅後も毎日3時間以上の自主練習を重ねたという。
曲のテンポを決めるドラムの齋藤旺佑君(3年)は「テンポが狂うのは緊張や不安があるから」と話す。常にリラックスして臨めるようになるまで練習する」ことを心がける。
意見を素直に受け入れる
メインボーカルの神山奈々さん(3年)は、少量のオリーブオイルをなめてのどの疲労を防ぎ、安定した歌唱のために体幹トレーニングを取り入れている。
バンド全体の練習の時には「お互いに演奏を見合い、他のメンバーの意見を素直に受け入れる気持ちが必要だ」と語る。部ではふだんから生徒同士でアドバイスをし合う。
ボーカル指導を担当する顧問の小川香織先生も「生徒たちのアイデアは多彩でおもしろい。いろいろな意見を受け入れる生徒が上達する」と実感しているという。
地道な基礎練習が大事
日本一の理由について、ギターの山本歩空(ほたか)君(3年)は「大会では自分たちが一番、縦の線が合っていたと感じた」と話す。テンポやリズムに乱れがなく、音の出だしがそろったクリアで迫力のある音は入部時から培ってきた基礎練習のたまものだ。
バンドリーダーの山村萌愛(めいと)さんは「それぞれが互いの意見を尊重できるようになってきたので、それがまとまりの良さにつながったのかなと思う」と振り返る。
1万5000人の前で「有終の美」
5月には最高賞の副賞として富士急ハイランド(山梨)で開催された「バンドリ!」のライブイベントにオープニングアクトとして出演。1万5000人の前でこのバンドで最後となる演奏を披露した。ライブビューイングで全国の映画館でも同時配信された。SNSでは好意的な感想が数多く寄せられた。神山さんは「福岡の人のからの感想もあった。音楽を通して遠く離れた人ともつながれる」と音楽の力に驚いた。
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部活データ
2004年創部。部員134人(1年生49人、2年生40人、3年生45人)、活動日は月~土曜日。昨年のスニーカーエイジではamazarashiの「空に歌えば」を披露。2年生バンドが今夏の第46回全国高校総合文化祭(とうきょう総文2022)出場予定。「クラブみんなで一つのものを作る」「音楽を通して表現することの大切さを知る」ことを心がけている。