2022年度入試で動向が注目される大学は? 21年度入試では志願者が伸びなかった総合型選抜(旧AO入試)と学校推薦型選抜(推薦入試)の志願者数は? 近年の入試動向もふまえ、河合塾教育研究開発本部の近藤治さんに入試予測を聞いた。(黒澤真紀)

全国3位の規模の国公立大が誕生

――2022年度入試において、動向を注目している大学はありますか?

国公立大学では、大阪府立大学と大阪市立大学が合併して「大阪公立大学」が誕生します。定員規模は3000人弱。大阪大学、東京大学に次ぐ、全国で3番目の規模の国公立大学になります。どちらも難関なので、これまでの偏差値がほぼ踏襲されるとみています。志願者の増減はなんとも言えません。国公立大学は共通テストの結果が出願を左右するからです。

新設される「大阪公立大学」の学部構成

北海道大が新たな総合型選抜

北海道大学は総合型選抜の「フロンティア入試」を導入します。一般入試の募集枠をかなり減らして、フロンティア入試のほうに定員を移します。国公立大学でも、個人評価書や自己推薦書で進学できる可能性が広がってきているという近年の傾向を反映する変更です。2016年に始まった東京大学の推薦入試もこの流れに沿うものです。教科のテストの点数以外の力を評価される入試はこれからも増えるでしょう。

奈良女子大学では、女子大初の工学部工学科が新設されます。人間情報分野と環境デザイン分野が学べます。難関大学、かつ募集人員が45人と少ないので狭き門ではあります。

私立大学では、兵庫医科大学と兵庫医療大学が統合します。受験生全体の数が減るので、志願者が増加するかどうかはわかりません、ただ、22年度も引き続き医療系は注目されるでしょう。

 

総合型・学校推薦型が志願者増、一般選抜は減少か

――総合型選抜・学校推薦型選抜・一般選抜の志願者の増減はどのように予測しますか?

総合型選抜の志願者が増えるでしょう。国公立大学でも、一般選抜の枠を狭めて総合型選抜を増やす動きがでています。昨年はコロナの影響で学校推薦型や総合型を受験しづらい状況でした。高3の1学期は休校で授業がない期間が長く、インターハイや甲子園をはじめ多くの大会が中止になった。アピールできる活動がない上に、選抜方法も面接がなかったり、あってもそれまでやったことのないオンライン面接だったので、去年の志願者は少なかったのです。今年は去年よりは活動ができているため、総合型、学校推薦型のどちらも志願者は増えるとみています。

一方で志願者が減少すると見られるのが一般選抜です。大学の志願者数が減少し、総合型選抜、学校推薦型選抜で合格する人が増えるからです。

大学は多様な人材を求め、総合型・学校推薦の定員増やす

――大学が学校推薦型や総合型の定員を増やしているのはなぜ?

「どこの大学でも通用する対策を万全にしています」という生徒より、「私は〇〇大学に行きたいです」という生徒に来てほしいからです。大学は、「その大学に入って何を学びたいか」という強い思いをもった生徒を集めたいのです。これまでは、ライバル大学と同じ入試科目を課しておけば、併願してくれるので志願者があつまる時代でした。たくさんの生徒に受けてもらって、その中から点数のいい順に100人とりましょうという入試だったのです。

それが次第に変わってきています。「本当にこの大学に入りたい人」、「この学部で一生懸命勉強したい人」に入学してほしい。総合型選抜と学校推薦型選抜が増えているのはこうした理由からです。もちろん教科学力は必要です。その上で、入学したいという意識の高さや熱意がこれからの大学入試で評価されるポイントになるでしょう。

近藤治さん
こんどう・おさむ 学校法人河合塾教育研究開発本部主席研究員。河合塾入塾後、教育情報分析部門で大学入試動向分析や進学情報誌の編集に携わる。教育情報部部長、中部本部長などを経て、2021年4月から現職。マスメディアへの情報発信、生徒、保護者、高校教員対象の講演を多数実施。