2021年度大学入試は、「大学入学共通テスト」の導入をはじめとした入試改革(高大接続改革)、そして新型コロナウイルス感染症の拡大が影響し、例年にないものとなった。では、2022年度の入試はどうなるか。近年の入試動向もふまえ、河合塾教育研究開発本部の近藤治さんに最新の入試予測を聞いた。(黒澤真紀)
共通テスト導入で浪人が減少
――2021年度大学入試を振り返って、これまでと変わった点を教えてください。
3つポイントがあります。1つ目は、受験者数の減少。背景には、21年度は、20年度よりも18歳人口が2万6千人減少したことがあります。さらに21年度から「大学入学共通テスト」(共通テスト)が始まることを見越して、20年度の入試は安全志向が高まりました。21年度入試を受けるのは大変だから、(目標を下げてでも)浪人せずに現役で大学に入ろうという人が多かったのです。
新傾向が少なかった国語、次回は傾向修正か
2つ目は、入試改革です。共通テストの平均点は前年のセンター試験を若干上回りました。受験生の減少もあり、国公立の難関大学や医学部への強気の出願につながったようです。例年だと届かないようなワンランク上の大学に挑戦した受験生が増えました。
共通テストは初年度だったため、科目間の難易度のばらつきがありました。理科と公民では、科目間の得点差が20点以上開いて得点調整が行われましたが、あと2点差が開いていなかったら、得点調整は行われませんでした。その場合は混乱が起きたかもしれません。
国語では、センター試験と出題があまり変わりませんでした。二度実施された試行調査の問題などと比べても新傾向の出題が少なく、「これが本当に共通テストの問題?」と思いました。22年度はその点が修正されてくると思います。
また、都市部の私立大学で大きな変更がありました。早稲田、上智、青山学院などの上位大学が思い切った入試改革をしました。これまで、私立大の入試改革は関西発というのが定番でした。東京の上位私立大学がこれほど大がかりな改革をするということは、これからの大学入試が変わっていくという象徴的な出来事だと思います。
医療系が人気、外国語・地域・国際は志願者減少
3つ目はやはり新型コロナウイルス感染症の影響です。21年度の医療現場の大変さを考えると、医療系を志望する受験生が少ないのではないかと思いましたが逆でした。命を守るという仕事には、医師だけではなくいろいろな立場があることを知ったことも、医療系の選択肢が増えた要因だと思います。
一方、それまで人気だった外国語学部と地域・国際系学部は敬遠されています。外国語学部は、入学してもすぐ留学できないことがマイナスに、地域・国際系は卒業後の主な進路である観光業などの一時的な不況もあり、就職のことも考えたようです。
受験生は社会の状況を冷静に見て志望校を決めているといえるかもしれません。これまでも不況のときは理系の志願者が増えたり、免許や資格が取れる学部に人気が集まったりしました。医療の仕事も、今は大変ですが、卒業後は国家資格も取れて、社会からも必要とされる仕事だとわかっています。コロナ禍も10年、20年は続かない。むしろ、いろんな活躍の場があることが受験生には魅力的に感じたのでしょう。
22年度大学入試はどうなる?
――22年度入試は受験生の数や内訳にどのような変化がありますか。
受験生は今年度も減少します。21年度の63万6千人から22年度は61万3万人に、およそ2万3千人減るので、大学の間口は広くなります。現役生の数はほぼ横ばいで、浪人生が前年比8割弱になるでしょう。浪人生が減った理由は、21年度で、私立大学の合格者数が増えたことがあります。志望大学に受かった人が多かったので、浪人が減ったのです。
――コロナの影響はどのくらいありますか?
全く影響がないことはありません。しかし、今はワクチン接種も進んでいます。大学も1年間、試行錯誤の中で経験を積んでいますので、21年度よりは受験環境が整った中でチャレンジできると思います。
――受験生の大学、学部の選び方は昨年と変わるでしょうか。
学部の選び方は同じ傾向だと考えています。大学選びでは、難関校にチャレンジする受験生が増えると予測しています。国公立については、共通テストが2年目になり、昨年よりも対策がとれるようになります。また、私立大学が合格者を増やしたので、これまで難関といわれていた大学の多くが、がんばって手を伸ばせば届くような大学になってきたためです。