現代文で点数が取れない、どう勉強すれば良いのか分からないという高校生も多いと思います。小説家で高校の国語科教員である瀬川雅峰さんに、「現代文の成績を上げるためにはどうすれば良いか」について高校生に向けてアドバイスをいただきました。(高槻官汰)

―現代文の定期テスト方法がイマイチよくわからないという声を耳にします。テストで点を取るためには、具体的にどう勉強すれば良いかを教えてください。

まず、定期テストで良い点を取ろうとするなら、その時に扱っている作品をしっかりと自分の頭で読むことが一般的な方法だと思います。

その際、「先生が言っていたことはどういうことだろう?」と思いながら教科書をじっくり読む、作品中の語彙(ごい)や修辞など基礎的な内容を押さえるなどが最初にやるべきことでしょう。

教科書をじっくり読んで

学校によっては準拠する問題集や先生からのプリントがあると思います。いずれにせよ、1つ1つの単元を大切にすることが定期テストの成績向上につながります。

入試突破には普段の読書が必要

―では、模試や入試の成績を上げるためには、何をすれば良いのでしょうか。

現代文は、定期テストの点数と模試の点数がリンクしにくい科目です。模試や入試でも問われているのは「長い文章を正確に読み取る力」と「文章を基に自分で思考する力」ですが、どんな問題が出ても対応できなければなりません。

そのためには、数多くの文章を読んでおくことが大切です。現代文はこれまでの読書経験が物を言う科目です。

―日ごろの読書が必要なのですね。

じっくり読んで、自分の中に内容を取り込んできた本の多さと思考パターンの多さは比例しますから、普段から読んでいる人は当然強いです。

日ごろから読書を行おう

読書に慣れてくると、読むスピードや個々の単語に気をつける注意力が上がってきます。慣れる前よりも安定した読みができるようになるのです。

そのうえで、受験のために短期間で点数を上げたいのであれば、ある程度の問題数を集中してこなす努力が必要です。

入試現代文は「ミステリー」

―模試や入試の問題を解く上で、高校生が気をつけるべきことはありますか。

私は、現代文の読解問題は「ミステリー」だと思っています。

本格ミステリーと同じで、必要な手がかりは全て提示されている。例えば、作品自体は100ページあるけど、問題にはたった3ページしか使われていないとしましょう。限られた範囲からの出題なので、解答に必要な要件や裏付けはその3ページの中に全て書かれています。

つまり、問題はその3ページに示された根拠だけを頼りに解かなくてはなりません。たとえその作品全体の結末を知っていたとしても、問題文中に書かれていなければ、そこを根拠にすることはできないのです。

従って、現代文の読解問題は、問題文に書かれてある以外の場所を勝手に補完してはならないという一種の「パズルミステリー」のようなものです。

現代文の読解問題は「パズルミステリー」

登場人物の気持ちはわからない?

―入試問題をミステリーと考えると、なんだかワクワクします。

加えて、入試問題で求められるのは、問題になっている範囲だけを見て、「最も確からしさがある推論」を組み立てる思考力です。

例えば「この時の登場人物の気持ちを述べよ」という問題があるとしましょう。すると「登場人物の気持ちなんてはっきり書いてない。厳密には分からないじゃないか」と言う人がいる。

しかし、問題を解く上で必要になる気持ちを象徴している表現や、気持ちを推察できるような手がかりは問題文に必ずあります。それを拾って根拠にしながら、思考で解答を組み立てる。自分の経験から来る予測に頼って読もうとすると、答えがズレやすくなるのです。

―定期テストでも入試でも、問われているのは「思考力」なのですね。

高校の国語の教科書は種類が多く、教科書によって扱っている題材は違います。裏を返すと、現代文では教科書の暗記は求められていないということになります。

現代文の学びの最終的なゴールは「思考力」をつけることにあります。そのために学校の授業では多くの作品を精読し、それぞれの作品が語っていることや描かれていることを自分の中に取り込んで考える基盤にしていくのです。

現役高校教員で小説家の瀬川さん

現代文は全科目の成績につながる

―そもそも、なぜ高校生は「現代文」を学ぶ必要があるのでしょうか。

現代文の学びは思考力に直結しています。そのため、現代文ができるかどうかは、「全科目の成績」につながってきます。

高校生の皆さんは、学校の授業以外でもさまざまなものに触れながら自分自身の言語を磨いています。皆さんは常に現代文の勉強をしているのです。学校の授業で現代文を学ぶことは、その一部にすぎません。

今社会では「自分で考えられる人」や「計画を立てて、それを実行できる人」が必要とされています。現代文を学ぶことは、そうした人を目指すための基礎力作りにもなっています。

 

辰巳センセイの文学教室

(上下巻、各税込792円、宝島社文庫)

高校の国語科教員である辰巳祐司と円城咲耶をはじめとする登場人物が繰り広げる人間ドラマを描く。時に恋愛模様あり、時に涙あり。高校で起こるさまざまな事件を「日本文学を読むこと」で解決していくミステリー小説。辰巳センセイの授業を受けることで事件解決へのヒントが見える、読めば日本文学に詳しくなれる話題作。