オススメのエッセイを高校生記者のSummerさんに紹介してもらいました。今回は「元女子高生、パパになる」。トランスジェンダーの杉山文野さんが過ごしてきた幸せをつかもうと葛藤する半生が綴られています。

トランスジェンダーの葛藤に心が震える

『元女子高生、パパになる』杉山文野著(文藝春秋、1400円=税抜)

『元女子高生、パパになる』、本の題名を見た瞬間すぐに手に取りました。

いざ1ページ目をめくると、200ページを超えるこの作品をたった2時間で一気に読み終えてしまいました。この本を読んで自分の無知を実感したのはもちろん、LGBTQコミュニティへの関心も湧きました。

『元女子高生、パパになる』杉山文野著(文藝春秋、1400円=税抜)

「30歳になったら死のう」と思ってた高校時代 

女性の体で生まれた杉山さんの性自認は男性。杉山さんがまだ10代だったころは、日本でのLGBTQの認知度は低く、テレビに出ているオネエキャラなどの印象しか社会は持っていませんでした。

自身のロールモデルとなる人が見つからず、30歳になったら死のうと思っていた女子高生時代の杉山さんですが、いざ30歳の誕生日を迎えると、そこには自分を性別関係なく一個人として理解してくれている家族や友人の姿があり、やっとその先の人生について考えることができるようになります。

パートナーの女性との間に子供がほしい

東京レインボープライドの共同代表として、LGBTQムーブメントのリーダーとして活躍する裏で、考え方が異なる多くの人々の意見をどうすり合わせることができるか、どうしたら最大多数の最大幸福を達成できるかに奮闘する日々が待っていました。

私生活では、パートナーの女性との間に子供を授かるため、ゲイの友人ゴンちゃんから精子提供を受けます。彼女は無事出産、現在は3人で育児をしているというストーリーも書かれています。

誰もがマジョリティでマイノリティ

杉山さんは、自分がセクシャルマイノリティであると同時に、1人のトランスジェンダーであって、すべてのセクシャルマイノリティを代表できるわけではないということに葛藤します。そして、その他のことに関しては、自分はマジョリティであることを認識しています。

そんな杉山さんは最後の章で、「誰ひとりとして同じ人がいない中では、誰もが何かしらのマジョリティであると同時に、マイノリティなのだ。」とつづっています。

この1文は、LGBTQコミュニティと自分は関係ないと思っていた自分の心を動かしました。SOGI(性的指向・性自認)に関してマジョリティである私ですが、日本を飛び出すと外国人というラベルが貼られ、簡単にマイノリティになります。

「自分がもしこうだったら?」考えられるように

すべてのマイノリティの人の気持ちや経験を理解することはできませんが、理解しようとする姿勢が大切なのではないかと考えるようになりました。

多様性が求められる世界において、もし自分がこうだったらどう思うかということを一つ一つ考えながら、よりよい世界をつくりあげる、そんな社会の一員になりたいと考えるようになりました。(高校生記者・Summer=3年)