オススメの小説を高校生記者のまやかさんに紹介してもらいました。

高校生の夏休みって、尊い

『青ノ果テ―花巻農芸高校地学部の夏―』/伊与原新 著(新潮文庫、630円=税抜

みなさんは、宮沢賢治の小説と聞いて何を思い浮かべますか? 

「注文の多い料理店」「セロ弾きのゴーシュ」「風の又三郎」など、いろいろな作品があると思います。今回は、代表作とも言われる「銀河鉄道の夜」にまつわるいくつかの謎を解く、青春ミステリー小説『青ノ果テ』を紹介します。

『青ノ果テ―花巻農芸高校地学部の夏―』伊与原新 著(新潮文庫、630円=税抜)

地学部の3人が「イーハトーブ」を探して

舞台は賢治ゆかりの地、岩手県花巻市。鹿踊り部の壮多、 壮多の幼なじみの七夏、初日から七夏に近づく転校生の深澤。この3人が物語の主要人物です。

3人は、ひょんなきっかけから地学部に入り、夏の研究課題を完成させるべく賢治の小説に出てくる「イーハトーブ」を探しに行くことになります。イーハトーブとは、賢治の小説に出てくる造語で理想郷という意味です。

その研究をしている途中、七夏が消えてしまい戸惑う主人公ですが、深澤が何かを知っていると感づき、そこからさらに物語は進み始めます。

岩手の自然を小説で楽しめる

この物語はミステリーの方に注目されがちですが、花巻の壮大な自然を楽しめるのもおすすめポイントの一つです。

情景描写がとても細やかなので、景色を思い浮かべるのが簡単にでき、文章を理解しやすくしてくれます。また、錦秋湖、田瀬湖など岩手県に実在する地名がたくさん出てくるので、実際に足を運ぶこともできます。

そして「カムパネルラが死なない世界」という、物語の鍵を握る言葉にも注目です。

高校生にとって一瞬の夏休み。それがいかに輝かしく、尊いものかを思い出させてくれるような本です。宮沢賢治に興味がある人もない人も、ぜひ読んでみてください(高校生記者・まやか=2年)