オススメの小説を高校生記者のじろう君に紹介してもらいました。
マイナースポーツ・カヌーの醍醐味が分かる
『君と漕ぐ―ながとろ高校カヌー部―』/武田綾乃著(新潮文庫、590円=税抜)
カヌースプリント界にとって、待ちに待った本でした。というのも、超マイナーなためにオリンピック競技で漫画の題材にもなっていないカヌースプリントにとっての、大きなアピールの機会となった本だからです。
私はカヌースプリントの競技者です。この本を読んで、ぜひ多くの人にカヌーを知ってもらいたい!
気持ちを合わせる大切さを知る
カヌースプリントには2人乗りのペアという種目があります。2人の息が合わないと勝てないどころか、経験者どうしでも転覆してしまうこともある難しい種目です。
うまくいかないとお互いのシングルのタイムより遅いこともあり、2人のシンクロした動きなしには立ちゆきません。
この種目を巡って部員たちの人間関係が描かれていきます。長年のペアを解消する勇気、勝利のための自己犠牲、ペアがうまくいかない葛藤、過去への執着などの複雑な感情が描写され、そして題名の「君」も入れ替わっていきます。
少しのずれも許されない舟の上で、交差する思いを一つにして大会に挑む小さなカヌー部の物語は、私たちに気持ちを合わせることの大切さを教えてくれます。お互いを信頼し助け合うことで、はじめて成功をおさめることができます。
漕ぎだすと止まらない……人生もまるでカヌーみたい
ただでさえ乗ることが難しいカヌー、マラソンのラストスパートが永遠に続くようなこの種目。私もチームメイトがペアで苦しむ姿をたくさん見てきました。それでも漕ぎ出すと止まらない。それがこの競技の魅力だと思います。
今苦しくても、自分の人生もカヌーのごとく止めることができないように、自分自身の姿にカヌーを重ね合わせて、ゴールまで頑張ろうという気持ちにさせてくれます。(高校生記者・じろう=2年)