オススメの小説を高校生記者のざわさんに紹介してもらいました。
だれにでも居場所があると感じさせてくれる
『青くて、溺れる』丸井とまと著(KADOKAWA、1200円=価格は税抜)
学校に行きたくない……私はときどきそう思ってしまいます。
理由はそれぞれ違うけれど、同じ気持ちになる人もいるのではないでしょうか。きっと、学校に行きたいと思っている人よりもずっと多いのでは、とも私は思ってしまいます。
そんな気持ちの中、この本を読み始めました。学校へ行く朝の電車の中で読み終えたとき、不思議と頑張ろうと思えたのです。私と同じ気持ちになる人が少しでも増えたらうれしいです。
カフェがいじめられ辛い日々から救ってくれた
主人公の祥子は、ささいなことをきっかけに、仲よしだったグループのいじめの対象になってしまいます。
消えてしまいたいと思うような毎日。しかし、ある日をきっかけに登下校の道からそれたところにあるカフェに通うようになります。そこにいつもいる皐月くんやラムさんなど素敵なお客さんやオーナーに悩みを打ち明けたり、悩みを聞いたりします。
そんな毎日を過ごしながら、祥子は前に進もうともがきます。けれど、ある日、大好きだったそのカフェが消えてしまうのです。
本気で向き合ってくれる温かい人々にふれて
私のこの本の好きなポイントは、たびたび出てくるカフェという空間です。
もしかしたら導かれていたのかもしれませんが、主人公は偶然にそのカフェを見つけます。そこにいつもいるお客さんと店員さんは、学校でいじめてくる人々とは違ってとても温かいのです。主人公の苦しみ、喜びに本気で向き合ってくれます。
このカフェの場面を読むたびに、私たち読者にもこのような「居場所」は絶対にあるのだ、ということを気づかせてくれるように感じました。学校や家など、それぞれにとっての憂鬱な場所は、生きていく中のほんの一部なのだと思います。
主人公の心情の変化や、皐月くんとの少し不思議な会話、人の冷たさと温かさ。たくさんの魅力が詰まっていて、読み出すと本当に止まりません。
ちょっと疲れたとき、つらいとき、幸せなとき、前を向きたいとき、どんなときでもはっとさせられることがあり、おすすめです。ぜひ読んでみてください。(高校生記者・ざわ=2年)