1979年にテレビ放送されたアニメ「機動戦士ガンダム」、関連シリーズ作に今なおとりこになる令和の高校生たちがいる。東京・攻玉社高校には、部活動としてガンダムのプラモデル作りに励む「ガンダム研究部」が存在する。部長の杉本怜翼君(1年)に活動の様子を語ってもらった。(中田宗孝、写真は一部学校提供)

入部したくて高校選び

―とても珍しい部活ですが、部の発足の経緯を教えてください。

始まりは2000年の文化祭で、ガンダム好きの有志生徒が集まり企画をしたんです。

ガンダム研究部の部員たち

その後、活動は続けられ「ガンダム研究愛好会」が発足。2018年に「同好会」となり、翌年には「部」へと昇格して今に至ります。

現在は、ガンダム好きの中高生が一緒に活動していて、部員の中には「ガンダム研究部」に入部するために第1志望校に選んだ生徒もいるんです。

―近年、部の活動がますます活発になったのですね。

はい。部に昇格できたのは、前部長の熱き魂によるところが大きいんです。

インタビューに答えてくれた杉本君。好きなモビルスーツは、アニメ「機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096」に登場するユニコーンガンダム2号機バンシィ

前部長は、精力的に部員集めをしながら、ジオラマの大会に参加するなど、課外活動にも積極的に取り組みました。僕らの学校では同好会から部に昇格するには通常2年かかるのですが、それを1年で成し遂げたんです。

ガンダムに注ぐ情熱、自分の信念を貫き通した前部長は、ガンダムの登場キャラクターに例えるなら「シャア・アズナブル」のような方です!

シャアとは、「赤い彗星」の二つ名で知られ、アニメ「機動戦士ガンダム」シリーズにおいて高い人気を誇るキャラクターなんですよ!!

ガンプラ製作の腕を磨く

―普段はどのような活動をしているのですか。

各部員が、思い思いのガンプラ製作に励んでいます。

中学生の新入部員はプラモデル作りの初心者もいるので、先輩部員が技術を丁寧に教えます。年3回「部内コンペ」を実施して、精密さや塗装のうまさ、独自性といった観点から全部員で品評・審査を行い、ガンプラ製作の腕を磨いてるんです。

杉本部長によるガンプラ作品名「あんこ」
ガンプラ製作に使う工具

また、部員製作のガンプラや、ガンダムの世界観をモチーフにしたジオラマ作品を大会に出品しています。

ジオラマ作品
ジオラマ作品

僕らの活動は、部員主導なのも特色の一つ。活動日の内容や年間予定を部員たちで考えるのはもちろん、地方開催のジオラマ大会への遠征計画、他校のジオラマ部との交流会の依頼なども自分たちでやっています。

ガンダムの名ぜりふで日常会話

―「この部活ならでは!」というエピソードはありますか。

ガンダムシリーズには、多くのファンに支持される名場面、名ぜりふがあります。そんな名ぜりふを、部員同士で会話するときに活用してます。

「止まるんじゃねぇぞ」「俺がガンダムだ」「……あんなの飾りです。偉い人にはそれが分からんのですよ」といった、ガンダムファンにはおなじみのせりふを日常会話の中に当たり前のように盛り込んできます(笑)

同じせりふを何度も聞かされるんですが、毎回笑ってしまうんです。僕の感覚では、1日1回は部員の誰かがガンダムの名言を口にしてますね(苦笑)

3メートルのダンボールオブジェの大作も

―そんな、みなさんのガンダム愛を校内外で披露する機会はありますか?

文化祭は部にとっても一大イベントです。

今年度は新型コロナウイルスの影響で「ガンプラ製作講座」の動画公開のみでしたが、例年は教室に自分たちが作ったガンプラを展示しています。

2019年の文化祭の様子

見学に訪れる小学生、大人が親子一緒になってガンダムの話題で盛り上がれるので、来場者の人気投票で毎年上位に食い込む企画になっています。

文化祭では「ダンボール製のガンダムオブジェ」も作っていて、過去には「3mのユニコーンガンダム立像」や「サラミス級宇宙巡洋艦」を製作して注目を集めました。すでに来年の文化祭で披露するオブジェは決まっているので期待してほしいですね。

2018年文化祭の制作物「3mのユニコーンガンダム」
2018年文化祭の制作物「地球連邦軍『サラミス級宇宙巡洋艦』」

文化祭後には、部員たちでカラオケに行くのが恒例の打ち上げ。なぜか3曲目にアニメ「機動戦士ガンダム」の主題歌「翔べ!ガンダム」を熱唱するのが部のお約束になってます(笑)

―今後の目標や計画はありますか?

部員一人一人のガンダム製作の技術力をもっとレベルアップさせて、毎年出場しているジオラマ大会で優勝を目指したいです。

そして、コロナ禍が落ち着いたら、今年、横浜にオープンした「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」に展示される「動く実物大ガンダム」を部員たちで見学に行こうと思っています。

部活データ

2019年創部。部員43人(3年生10人、2年生2人、1年生7人、中学生24人)。週2日活動。ガンダムの世界観をモチーフに製作したジオラマ作品を「ハイスクール国際ジオラマグランプリ」や「ガンプラビルダーズワールドカップ(GBWC)」に出品。部を引退して高校卒業した元部員は現役部員から「ニュータイプ(ガンダム用語で「地球から巣立ち、宇宙環境に適応し変革を経た新しい人類とされる人間」という意味)」と呼ばれるようになる。