北海道上士幌(かみしほろ)高校には熱気球部がある。全国の高校で2校にしかないとみられる珍しい部活だ。部長を務める門馬博斗君(2年)に活動内容を聞いた。(中田宗孝、写真は学校提供)
熱気球でにぎわう町の特別な部活
―熱気球部、珍しいですね!
高校のある上士幌町は、大規模な熱気球のイベントで賑わう「熱気球の町」なんです。有志の生徒が立ち上げた熱気球サークルを経て、1994年に部へと昇格したと顧問の先生から聞いています。
町内で開催される熱気球イベントのボランティアスタッフとして先生や生徒が参加する中で、生徒たちから「自分たちも熱気球を飛ばしてみたい」との声があがったそうです。そして「上士幌高校振興会」から熱気球が貸し出されて、活動が始まったと聞いています。現在、部が使用している熱気球は4機目です。
―普段どんな活動をしているのですか?
自分たちの気球で空を飛ぶ「フリーフライト」、ロープに留められた熱気球で搭乗体験をしてもらう「係留イベント」を、道の駅や小学校などで行うのが主な活動です。
毎年8月と2月には、地元で開催される熱気球の競技大会に出場しています。
―入部直後は熱気球に関する知識も浅かったと思います。部員のみなさんは、どのように気球の知識や技術を学ぶのですか。
部員全員でフライトや係留の準備をしながら、実践の中で学んでいくんです。顧問の先生や先輩部員から教わりながら、自分たちも実際にやってみて、熱気球の立ち上げ(球皮を膨らませる)などのやり方を覚えていきます。
熱気球の操縦は、部員は免許を持っていないのでできません。そのため、地域の熱気球クラブチームの方や顧問の先生がパイロットになり、僕たちはサポートをしています。
マイナス20度の早朝にフライト
―大変なことはありますか?
熱気球を立ちあげるまでに約1時間半もかかります。そして、冬のフライト準備は、特に大変です。自分たちの作業と合わせて、寒さとの戦いでもあるんです……(苦笑)
風の穏やかな早朝が気球の飛行に適しているため、部員は早朝5時半に集合。北海道の冬はマイナス20度になることもあり、手が動かなくなるほど寒いです。
―熱気球を上手に飛ばすうえで特に重要な技術を教えてください。
風を読む力です。フライト前に風船(パイロットバルーン)を飛ばして、風に流される風船の方向と速度を確認して、当日の風向と風速を判断します。
風を読む力は多くのフライト経験で身につくんです。その日の風をうまくつかむことができれば、上空での状況判断も臨機応変に対応できるようになります。
地上1000メートルの絶景に出会える
―活動の中でもっとも楽しいと感じる瞬間は?
地上からでは絶対に見ることのできない絶景に出会えたときです。
飛行する熱気球のゴンドラから望む、地上1000メートルの景色はすごい! 早起きしてフライト作業をした疲れが、一気に吹き飛びます。空から見る日の入りや大きな湖……忘れられない景色ばかりなんです。
―今後の目標はありますか?
熱気球の大会での優勝は、部の目標の一つ。大人の方々との勝負になるのですが、チーム力を強くして頑張りたいです。
個人の目標は、18歳になったら熱気球パイロットの免許取得を目指します。風の動きを読みながら熱気球を操縦するパイロットの姿は、めちゃくちゃカッコいいんです!
先生がパイロット免許を取得
―熱気球部顧問の小屋英理香先生にうかがいます。先生が熱気球パイロットの免許を取得するんですね。
免許を取得するのは必ずではないですが、熱気球部は顧問も生徒と一緒に頑張るという気持ちなんです。歴代の顧問も免許を取得してきました。
私自身は、本校に赴任するまでまったくの熱気球初心者。同部顧問の一人となり活動する中で、免許を取ろうと思い、今年1月の試験に合格しました。
パイロットになるための試験は満18歳以上が受けられるので、数年前には、3年生の部員が在学中に免許を取得したこともあるんです。
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部活データ
1994年創部。部員5人(3年生2人、2年生2人、1年生1人)。週1~2日活動。校内や同校近郊の飛行スポットからのフリーフライトのほか、校外での係留イベントを年間4~5回行う。2020年、熱気球の大会「上士幌ウインターバルーンミーティング」ヘジテーション・ワルツ競技で22チーム中4位の好成績を収めた。部員同士仲が良い。「優しくて面白い顧問の先生方とも親しいのがこの部活ならではの魅力の一つ」(門馬君)