茅原遥さん(新潟・新潟中央高校2年)の写真作品「変わらないもの」を紹介します。入院している祖母の手を撮影したこの作品は、文化部の全国大会の一つである全国高校総合文化祭2020こうち総文の写真部門で文化庁長官賞を受賞しました。どうやって撮影したのかを聞きました。

変わらないもの(第44回全国高等学校総合文化祭 2020こうち総文 写真部門文化庁長官賞)

祖母の手を握り蘇った思い出と温かさ

―この手は誰の手なのですか?

祖母の手です。

―作品に込めた思いを教えてください。

祖母の手の変わらない温かさです。

私と家族が、入院している祖母に会いに行ったとき、祖母はやせ細ってしまっていて、元気がなくなっていました。そのような姿を見て、私は「もう昔のように元気な祖母と話すことはできないんだ」と思い、とても寂しく不安になっていました。

しかし、祖母の手を握ったとき、昔と変わらない温かさを感じたんです。今まで祖母と過ごしてきた思い出がよみがえり、「変わらないものがあったこと」がとてもうれしく、心を動かされたのでシャッターを切りました。

私と同じように、家族が高齢になって、元気がない姿になってしまったことを寂しく感じている方に、この作品が心温まるものになったらいいなと思っています。

片手でシャッターを何度も切った

―こだわったり、工夫したりしたポイントは?

縦の構図で撮ることで、祖母の手から腕を大きく写し、ぱっと見たときに祖母の手が印象に残るようにしました。

また、あえて周りに明るい色を入れないようにしました。そうすることで、変わってしまった姿を寂しく思う私の気持ちと、祖母の手から感じられるぬくもりをうれしく思う私の気持ちとのコントラストを、色味で表現することにこだわりました。

―何が難しかったですか?

祖母の手を握りながら撮影したので、片手でカメラを持ってシャッターを切ったことです。手元が安定せず、何度も何度も満足のいく写真が撮れるまで、挑戦しました。

祖母の体調がよくなかったので、祖母が疲れないように短時間で撮ることにも苦労しました。

日常の中にある素敵なものを撮ってみて

―よい作品を作るためのコツを教えてください

私は、本格的なカメラを使っているわけでも、写真を撮る技術があるわけでもありません。

ですが、日常の中にある普段は気付かないようなすてきなものを見つけたときや、自分以外の人とも共有したいと思うほど心動かされたものを撮ると、自分と同じようにすてきだと思ったり、感動してもらえたりするのかと思います。