私のクラスに教育実習生の北村先生(私立大学文学部4年、国語担当)がやってきました。なぜ高校の教員を目指そうとしているのか、国語を選んだのはなぜかなど、取材してみました。(高校生記者・なお=2年)

学ぶ喜びを面白く伝えたい

―教員を目指した理由は何ですか?

自分の本当にやりたいことだと思ったから。

北村先生(左)と高校生記者のなおさん

もともと人前に出ることが好きで、大学入学当初は役者になりたいと思っていました。しかし、自分は別の誰かの人生を演じることではなく、自分で考えたことを人に伝えることや、生のお客さんの反応を得られる瞬間が好きだと気づきました。

自分が勉強をして感じた驚きや感動、新しい事実を知ったときの喜びを面白く伝えたいと思ったからです。

悩みや不安から少しでも楽に

―なぜ小中学校ではなく、高校の先生を選んだのですか?

大人と子どもの中間に位置し、内面が大きく成長する時期であるのが高校生。自分も高校生のときに、情緒が不安定な時期がありました。

高校生の助けになりたい(画像はイメージ)

そうした気持ちがわかる自分が、悩みや不安から少しでも楽になる手伝いをしてあげたいと思ったからです。

学ぶ内容が、より専門的になるのが高校での学びだと思います。そのため、一つの内容を突き詰める楽しさがあります。他の教科とのつながりが見えてくるのも、高校での学びの醍醐味です。

こうした「知識の体系性」も高校生たちに伝えたいと考えています。

文学の必要性を伝えたい

―数ある科目の中で、国語の先生になろうと思ったきっかけを教えてください。

理系科目と比べて、文学は非生産的だと捉える人もいます。ですが、今の世の中で、なぜわれわれが文学を必要としているのかを考えてもらうきっかけを、高校生の皆さんに与えたいため国語を選びました。

また、国語はセンス、と思われやすい科目。ですが、「論理的な教科であること」を伝えたいです。

―労働時間の長さなど、ブラックな面も注目されがちな教員ですが、この道を目指す中で迷いはありましたか?

やはり、「自分の時間が取れなくなってしまうのでは」などの迷いもありました。ですが、高校生への精神面でのサポートなど、教員ならではのことをしたかったので、後悔はないです。

教育実習で「期待に答えねば」

―大学での講義では気づかなかった、教育実習ならではの学びはありましたか?

クラスによって雰囲気が全く異なることです。

生徒の反応に驚いた(写真はイメージ)

特に、会話が多く授業中の反応がいいクラスでは、投げかけた問いに対して出てくる回答が教科書のレベルを超えた深いものであったり、斬新な見方であったり……と、独自の見方によるものが多いことに気づきました。

―教育実習の中で楽しかったことと大変だったことは何ですか?

楽しかったことは、授業外で質問をしてくれたり、大学の話に興味を持ってくれたりした生徒と、じっくり話ができたことです。

大変だったことは、同じような展開の授業になってしまったため、生徒が興味を持ってくれるように変化を考えたことです。

難しく大変だったけれど、それを考える中で新たな発見があり、楽しい時間でもありました。

―教育実習をして驚いたことは?

大学の卒業論文レベルの考察を、授業内でしてくれた生徒がいたことです。

実習生という立場ではありましたが、一生懸命課題に取り組んでくれたり、相談をしにきてくれたりしたことに、驚きつつも自信が持てたし、期待に応えなければと思いました。

―授業を受ける側の生徒に対して、もっとこうしてほしいと思ったことがあれば教えてください。

問いかけやギャグには反応してくれるとありがたいです。

教員を目指す高校生へ「全てが糧になる」

―教員を目指す高校生へメッセージをお願いします。

経験してきたことの全てが、将来の糧になります。

勉強していること、読んでいる本、遊びに行ったところ、人間関係、悩んでいること……自分が先生に言われてうれしかったことなどは、特に覚えておくといいのではないでしょうか。

今先生とやり取りした経験がためになる(写真はイメージ)

今、教員には勉強面だけでなく、心の面でも子どもたちを支えることが求められています。

この大変なコロナの時代を生き抜いている高校生の皆さんの悔しい経験、やりたいことが全て台無しになってしまった経験、努力が報われなかった経験、たくさんあると思います。そのつらさに耐え、乗り越えようと、毎日歩き続けている皆さんにしか伝えられないことが絶対にあります。

そして、いつか教員になった皆さんから届けられる言葉で、きっとまた次の世代の一歩へとつながっていくと思っています。皆さんの活躍を応援しています。

【取材後記】

今回、なかなか聞く機会のない教育実習のことや大学の話を聞くことができ、とても良い経験になりました。

「自分が学生のときにかけてもらった言葉や、先生に対して思ったことを覚えておく」ということは、教員を目指す中で、そして教員になったあとにもつながる大切な部分なのかなと感じました。

目標を見つけるにはたくさんインプットして

Q.どんな学生生活を送ってきましたか?

大学では演劇学を専攻していますが、演劇の歴史、演技論、戯曲についての授業は座学で、ゼミではアメリカ劇作家について学びました。

演劇サークルに所属していました。年3回の公演に向けて活動していました。メインの役のときもありましたが、脚本や衣装作り、照明担当も経験しました。

アルバイトは、ずっと同じパン屋さんで働いていました。

演劇サークルの発表のときの写真

Q.緊張したときの力の発揮の仕方や、ルーティンはありますか?

テストや受験であれば、「こんなに毎日頑張ったのだから、突然頭が真っ白になることはありえない」と自分に言い聞かせます。

Q.目標の見つけ方は?

インプットをたくさんすることです。美術館へ行く、図書館へ行く、映画や舞台を見る、何でもいいのでとにかく動き、感じたことや考えたことを書き出すことです。

Q.気分転換には何をしますか?

たくさん喋ることが、私にとっての気分転換です。話すことで頭の中が整理されるのを感じるからで、話し相手がいないときには1人で喋ることも多いです。