空の安全を守る「航空管制官」という仕事を知っていますか? 航空機が安全に運行できるように指示を送り、万が一判断を誤ると人命に関わる大変な仕事です。航空管制官の父の日常を紹介します。(高校生記者・marinon=3年)

航空機を安全に運航させる

―仕事内容を教えて。

航空機が安全かつ効率的に運航できるように、レーダーや無線電話を使って、地上からパイロットに情報や指示を送ることが主な業務だよ。

下から見上げた管制塔

―どこで、どんな職種の人と仕事をしてるの?

全国の空港や、航空路を管制している管制部という官署で働いているよ。管制官はチームで勤務していて、交代しながら24時間365日、日本の空を守っているんだ。

―始業から終業まで、一日の流れを教えて。

勤務はチームごとに分かれていて、「早番か遅番→早番→遅番→夜勤→夜勤明け(休み)」というサイクルで回しているよ。土日が休みというような規則性はなく、不規則だよ。

中部国際空港の展望デッキから見るエプロン(航空機が駐機するための施設)

集中力と協調性が大切

―この仕事を目指した時期と、目指そうと思ったきっかけは?

大学を卒業後は民間企業で働いていたんだ。でも、元々航空業界に興味があったのと、空の安全を守るという責任ある仕事をしたいと思ったから、試験を受けることにしたよ。

―どんな能力が必要?

特に必要な能力はないけれど……。責任ある仕事だから、集中力と協調性、また常に勉強し続けることが大切かな。

―技術はどう身につけたの? 

まず管制官採用試験に合格すると、国家公務員として採用されるよ。次に航空保安大学校で8カ月間、管制官の基礎を学ぶんだ。卒業後は、全国の空港や管制部に訓練生として配属される。そこで約2年かけて実務を積み、一人前になるよ。勤務する空港を異動すると、そこではまた訓練生として数カ月~半年間、実務訓練を積むことになるよ。

「何事もない」日常を守る

―下積み時代で印象に残っているエピソードは?

新人で配属された空港では、民間機のほかにセスナやヘリコプターなどの小型機、速度が速い自衛隊機の管制も行ったよ。滑走路は1本だから、速度がさまざまな航空機をさばくのに苦労したな。

空港ロビー

―やりがいを感じる瞬間は?

一日の勤務が終わって、無事に何事もなく帰宅できるときにやりがいを感じる。航空機が安全に飛行できるのは当たり前だからね。忙しかったときや、天候が悪く大変だったときはなおさらだね。

―厳しさ、大変なところは? 具体的なエピソードも教えて。

有事にも冷静な判断が求められることや、一瞬の判断が人命に関わる場合もあるという重責はこの仕事の厳しさと言えるね。

震度4を超える地震が起きた空港は、滑走路を閉鎖して安全を確認するという規則があるんだ。東日本大震災のときは何カ所もの空港が閉鎖したから、着陸できなくなった飛行機を上空に待機させたり、他の空港へ着陸させる必要があったりして大変だったよ。飛行機に積んでいる燃料の量によっては、他の空港への着陸が難しい場合もあって、冷静かつ迅速な判断が求められた一例だね。

英語で指示を出すことも

―向いているのはどんな人?

常に向上心を持ち、周りの人と協調できる人、日頃から冷静な判断を下せる人かな。

―この仕事の魅力は?

航空機を利用するお客さんが安心して効率よく移動できるように、裏方からサポートできること。あの大きなジェット機を操縦するパイロットから頼りにされることも、魅力ややりがいの一つと言えるかな。

―将来、管制官の仕事はどんな風に変わっていくと思う?

航空機側のシステムも運航を支えるシステムも技術革新しているけれど、トラブル発生時など、最後は人間の判断によるところが大きい。管制官の重要性は変わらないと思うな。

―この仕事を目指す高校生がいまやっておいたほうがよいことは?

学校の授業をしっかり勉強し、さまざまなことに興味を持つことだと思う。英語で指示を出したり交信したりするので、ある程度の英語力を身に付けておくことも大切。

【取材後記】厳しい仕事に就く父を誇りに思う

取材によって父の仕事の厳しさを知りました。航空というと、パイロットやキャビンアテンダントに目がいきがちですが、そのパイロットを支えている管制官あっての空の安全なのだと思いました。

優しく穏やかな父ですが、普段の生活を律しているのも仕事への責任感の表れなのかもしれません。当たり前のことかもしれませんが、交通ルールの順守から始まり、公共マナー、世の中の出来事や動きに関心を持つことの大切さなどを私にもよく話しています。そんな父を尊敬し、誇りに思います。やりがいのある職業に就くことは簡単なことではありません。常日頃の心がけを大切に、夢をかなえていきたいと思いました。