2023年10月で30周年を迎える高校生新聞では、「高校生記者」が大人の編集者や記者と協力し、記事を届けてきました。元高校生記者の田崎陸さんは、現在、日本経済新聞社で新聞記者として活躍しています。高校時代を振り返り、今の自分自身につながる原点を話してもらいました。(文・野村麻里子、写真・本人提供)
全国を飛び回る新聞記者
―普段はどんな仕事をしていますか?
東京本社で主に自治体や行政の取材をしています。情報を得て、企画を立てて、取材して記事を書くことが主な仕事の軸です。全国を飛び回っています。
昨年度までは名古屋支社にいました。コロナ禍だったので、特に感染状況や関連する地域行政の記事に多く携わってきました。
―大変だと感じることは?
名古屋支社時代は、夜中に緊急記者会見が行われ、役所に駆け付けることもありました。私は体力があるほうなので、元気にこなせましたよ!
―思い入れのある記事を教えてください。
「山小屋での食事」と聞くと、簡素なイメージが強いと思いますが、最近ビーフシチューが食べられるなど豪華に進化しているんです。そこで、実際に山に登り山小屋に泊まり、取材しました。私は高校時代山岳部に所属していて、昔から登山が好きなんです。自分の好きなことが仕事でも形になり、さらに記事が「日経MJ」(日本経済新聞社の消費・流通等に特化した専門紙)の1面に載ったので達成感がありました。
3つの部活を兼部
―高校時代、山岳部のほかにも兼部していたと聞きました。
新聞部や弁論部、そのほかに文化祭実行委員会にも所属していました。全部興味があって好きだからやってみたくって、一つに絞る選択肢はありませんでした。どの活動も全力を注ぎ、新聞部、弁論部ともに文化部の全国大会にあたる「全国高校総合文化祭」に出場しました。
―出身校の高崎高校は文化祭が盛んなことで有名ですよね。
私は文化祭実行委員会の中でも広報部門の責任者でした。来場者数を増やすために、テレビ局や地元紙に取り上げてもらおうと売り込みをしました。
一人長野へ泊まりがけで取材
―新聞も弁論も文化祭の広報も、「人に伝える」ことが一貫していますね。高校生記者も伝える活動の一つですが、やろうと思ったきっかけは?
高校生新聞の紙面で高校生記者募集の広告を見て、応募しました。印象に残っているのは、高校生による英語ディベートの全国大会を取材したことです。私自身、県大会に出場した経験があるので、「全国大会を取材しに行きたい」と編集部に相談したところ、企画が通り、一人で長野県へ出張して記事を書きました。
そのほかにも、同じ高校生記者で集まるミーティングをした際は、全く違う環境で過ごし違う価値観を持った他校の高校生たちと触れ合い、刺激になりましたね。
記事を書く責任感が芽生えた
―田崎さんにとって高校生記者の活動で学んだことはありますか?
校内の新聞部では同じ高校の生徒だけが読者ですが、高校生新聞は全国の高校生が読者です。当たり前ではありますが、「記事の内容を間違っちゃいけないな」「しっかり相手の話を聞いて文章にしないといけないな」という記事を作る責任感が芽生えました。
やりたいことには貪欲に
―現役高校生に伝えたいアドバイスをお願いします。
高校生記者や部活など、高校時代の経験の中で、「新聞記者になりたい」という明確な将来の夢・目標が見えて、それが私の今につながっています。欲張ってでも「やりたい」と思うことには全て果敢に挑戦してほしいです。
大人になって、会社など一つの組織に所属するようになると、身動きがとりにくくなります。高校生は自由に動ける上に、やりたいことがかなう環境にいますから。そのチャンスをぜひ生かしてください。
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田崎陸
たざき・りく 群馬県立高崎高校出身。中央大学総合政策学部卒。2019年、日本経済新聞社入社、23年名古屋支社から東京本社に異動、地域報道を担当。