営業の仕事は文系の人がすると思っていたが、私の母はメーカーの営業部門に属し「マーケティングリサーチ」という、「バリバリ数学を使う仕事」をしている。マーケティングとはどんな仕事をしているのかインタビューしてみた。 (高校生記者・ひよこのこ=2年)

商品の売り方・売れ方を徹底リサーチ

―マーケティングリサーチって何をするの?

一言で言うなら、企業や団体からの依頼を受け、「何がどれだけ誰に売れているか」などを統計的なデータを分析して考察する仕事かな。

―お母さんは具体的にどういう仕事をしてるの?

ざっくり言うと、「自分の会社の商品についての状況分析」「自分の会社がこれから何を売るべきかについて考えて提案」「得意先のコンビニやスーパーといった小売店に売り方を提案」とかかな。

自宅で撮影した母(右)と私

自社の商品分析をする仕事では、小売店のレジの記録から「いつ、どの商品が、どれだけ売れた」という情報を取り出したり、その商品を買ったお客さんのカードからお客さんの年齢層、性別、職業などの情報を手に入れたりするよ。

他にも、アンケート調査を行って「なぜその商品を買ったのか」を聞くことも。それをもとにこの商品はどういう人たちにどういうタイミングで、そしてなぜ売れているかを調べるよ。

―いろいろな方法で商品の売れ方を分析するんだね。

そう。自分の会社にこれから何を売るべきか提案するためには、「お客さんの間で何がはやっているか」「どういう広告が注目されているか」を調べるの。小売店に「自社のどの商品を置いたら売れるか」「どこに置いたら売れるか」を提案したり、チラシ、ポップ作り、キャンペーンの開催なども投げかけていくよ。

例えば、「飲み物Aが真夜中に売れているのは、この映画のせいでみんなが夜更かしして喉が渇くから。ならばその時間に一緒に別の飲み物Bもアピールしたら売れるはず!」とか……。でもここまですることはうちの会社くらいかもしれないわ。

統計の知識とコミュ力が必要

―この仕事をするにはどんな力がいる?

統計データを扱う技術とコミュニケーション能力かな。統計データを扱う能力は、商品の売れ行きを調べたりする場面で必要。コミュニケーション能力は、小売店の方に商品の売り方を提案するときや、アンケート調査で座談会をするときに大切ね。

―統計の技術はどうやって習得したの?

会社から「この本に書かれた技術を一カ月で身に付けて」と本を渡されて、習得したわ。難しかったから高校の時の教科書をもう一度買い直して、参考にしたよ。

週に1度、昼休みに同じ業務をする人たちと集まって、英語で書かれたマーケティング方法についての文献を翻訳してきて報告し合う勉強会に参加したよ。翻訳は当番制だったから、当たったときは頑張って用意したわ。

立てた仮説が当たるとうれしい

―この仕事に向いているのはどんな人?

統計を使うから数学が好きな人。あとは仮説を立てるのが得意な人や、コミュニケーション能力がある人かな。

母の仕事道具のパソコン一式とヘッドホン

―この仕事で楽しいことは?

自社の商品について、「こういう売り方をすれば売れるはず!」という仮説を立てて、それが当たったときとてもうれしいわ。

―逆に何が大変?

数字だけ見ていても「どうしてこの結果が出るのかわからない」ことがあるから、現場を見ないといけないかな。

―この仕事は将来、どんな風に変わると思う?

お客さんについて手に入る情報がどんどん増えていくから、活用してお客さんの心理にもっと忠実に沿ったマーケティングを考えることが求められるようになると思うわ。

―この仕事を目指す高校生がいまやっておいたほうがよいことは?

統計の勉強! あといろんなことに興味を持って、「なんでだろう」と考えることかな。

【取材後記】数学の必要性を実感

私は数学がとても苦手で、将来数学を使わずにすむ職業につきたいと思っていた。テレビの宣伝やドラマで見た営業の仕事の人はあまり数学を使っていなさそうだし、やりがいもありそうに見えて、「私もやりたい! これなら私にもできる!」と思っていた。

しかし、母の仕事を取材してから、営業といっても話す以外の仕事がたくさんあること、営業部門でも数学を使う仕事に配属されうるということが分かった。仕事をする上では文系か理系どちらかだけの能力があればよいわけではないと知り、文系の学問を専攻しても数学を学ぶ必要性を実感した。