令和となって、最初の選抜高校野球は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため中止となった。さらに夏の選手権も中止となって打ちひしがれた球児たちだった。しかし、その救済となる代替大会が各地で独自に開催され、選抜代表校の交流試合が阪神甲子園球場で開催されることとなった。交流試合の注目試合をピックアップしてみた。(文・手束仁、写真・ジャスト・プランニング)

昨夏の甲子園決勝と同じ「履正社VS星稜」に注目

何といっても注目は、昨夏の甲子園決勝と同一カードとなった履正社(大阪)と星稜(石川)の試合だろう。昨夏の優勝校の履正社は昨夏の経験もある岩崎竣典(3年)はじめ選手個々のポテンシャルは高い。

これに対する準優勝校の星稜は、昨秋の北信越大会を制し、荻原吟哉(3年)と内山壮真(3年)のバッテリーらの経験値が高い。荻原は、丁寧に低めに球を集められる制球力が魅力。2年生のときから北信越大会などでも好投しており、ピンチでも落ち着いた投球が光る。

星稜・荻原吟哉

履正社とともに、大阪の雄でもある大阪桐蔭(大阪)と東海大相模(神奈川)の試合は「東西の横綱対決」と、今大会最大の注目試合と見る人も多い。毎年、夏の選手権前に最後の仕上げの腕試しの試合を組んでいる間柄で、監督同士も同級生という縁もある。

評判の高い近畿勢だが、明石商業(兵庫)は桐生第一(群馬)と対戦する。昨年は春夏4強の明石商業だが、エース中森俊介(3年)と来田涼斗(3年)の投打の軸が残ってチームの核となっている。

明石商・来田涼斗

秋季近畿大会を制した天理(奈良)は明治神宮大会でも準決勝進出を果たしている。秋季奈良県大会3位から勝ち上がった天理だが、庭野夢叶(3年)と193センチの達孝太(2年)の両投手は、そうは打ち込まれないだろう。

庭野は、強気の投球で打者の内側に投げ込んでいく度胸の投球も魅力だ。達は、近畿大会決勝では大阪桐蔭を8回途中まで1失点に抑えて自信を得ている。冬のトレーニングで下半身を鍛えて充実してきて春を迎えることで、さらに球威も増してきているだけに期待も高い。

天理・庭野夢叶

打者では、明治神宮大会で1試合3本塁打を放った河西陽路(3年)の打棒も楽しみだ。河西が打つとベンチがより明るくなるという、ムードメーカー的な役割も担っている。対する広島新庄(広島)は勝負強いチーム。どのような戦いを示すのかも興味深いところだ。

逸材ぞろいの中京大中京・エース高橋 プロ注目の速球

昨秋の明治神宮大会を制した中京大中京(愛知)はセンバツが10年ぶりの出場ということになっていた。天理とともに出場する奈良の智辯学園との対戦となって、これも期待の好カードである。

中京大中京はメンバーも逸材ぞろいでエース高橋宏斗(3年)はプロも注目の速球派だ。最速150キロ超で、厳しく打者の内側を突いてくる度胸もある。

球種としてもストレートだけではなく、スライダーやカットボール、スプリットを巧みにコントロールしていく能力がある。秋は公式戦で75回を投げて、72奪三振という数字が残っている。

中京大中京・高橋宏斗

二枚看板のもう一人として高橋源一郎監督の期待も高いのが左腕松島元希(3年)だ。

身長164センチと小柄ながら、Max147キロとスピードもある。高橋と併用されていくことで自信もつけてきた。

打線も印出太一(3年)と中山礼都(3年)などの能力は高い。印出は昨秋までで高校通算16本塁打を記録しているが、秋の公式戦の打率.448で25打点と、四番打者としての信頼も厚い。

健大高崎 左腕投手の下&142キロストレートが武器の橋本

県大会では3位ながら、関東大会を制し明治神宮大会でも準優勝を果たした健大高崎(群馬)は、21世紀枠で出場を果たした帯広農業(北海道)と対戦が決まった。健大高崎は下慎之介(3年)と長身191センチの橋本拳汰(3年)の両投手が注目だ。

下は、スライダーを武器とした左腕投手で、青栁博文監督の信頼も厚い。冬の間には、それに加えて新球としてのチェンジアップのマスターに励んでいた。

健大高崎・下慎之介

橋本は三重県出身で、長身を利して投げ下ろす142キロのストレートは魅力的だ。素材力の高さは太鼓判を押されているが、角度もあるのでと相手打者は打ちづらい。

どちらが来ても帯広農業打線には手ごわい相手となるが、どこまで食い下がれるか。

国士館の黒澤 独特の打撃フォームで勝負

他の21世紀枠での代表校の平田(島根)は創成館(長崎)、磐城(福島)は国士舘(東京)とそれぞれ対戦する。国士舘は東京都大会1位で2年連続出場となっている。

168センチで四番を任される黒澤孟朗(3年)は、身体をグッとかがめる独特の打撃フォームではあるが、ここぞというところで勝負強さを見せる。しっかりととらえた打球の鋭さは見た目以上のものがある。

国士舘・黒澤孟朗

選抜初出場を果たした白樺学園(北海道)は、秋の大会では力の投球を披露した片山楽生(3年)が昨夏以降に投手となったが、どれだけ投球術を磨いてきて、山梨学院(山梨)打線を封じられるかがカギとなる。

白樺学園・片山楽生

仙台育英の柱・笹倉 2年生ながら注目度高い

東北勢では仙台育英(宮城)の2年生ながらチームの柱となっている笹倉世凪(2年)は1年生からの甲子園での経験もあり注目度も高い。笹倉は投げないときは一塁を守ることが多いが、五番打者としてもチャンスにも強く期待が高い。四番の入江大樹(3年)もセンス抜群で、この中軸の勝負強さは定評がある。勝負強い倉敷商業(岡山)とは好勝負が期待できる。

倉敷商業のエース左腕・永野司(2年)は、目を見張るようなスピードがあるというワケではないが、丁寧な投球で試合を作れる。球の切れがいいのも特徴だ。

仙台育英・笹倉世凪

梶山和洋監督は、秋季大会ではやや失点が多かったことを反省。永野を含めた投手陣の底上げを目指して一冬を超えた。

組み合わせとしては、ともに春夏を通じて初の甲子園出場となった鹿児島城西(鹿児島)と加藤学園(静岡)の顔合わせもフレッシュだ。交流試合とはいえ、憧れの甲子園でどんな戦いを披露してくれるのか楽しみである。