気軽に読めるオススメ短編集を高校生記者に紹介してもらいました。(価格は税抜)

近未来の世界をユーモアたっぷりに描く

『ボッコちゃん』星新一著(新潮文庫、616円)

気軽に読める短編集は……と言われたら、私は一番に星新一の『ボッコちゃん』をおすすめします。その魅力はなんといっても、ユーモアとウイットに富んだ内容です。

例えば、表題作「ボッコちゃん」では、とあるバーに女性型アンドロイド「ボッコちゃん」が登場します。他のバーと違うところはそれだけなのですが、「バー」という人間的・社会的な場面に「アンドロイド」というSF要素を入れ込むことによって、物語は思いがけない結末へ向かいます。

近未来的なテーマを、決してワクワクだけで終わらせない珠玉の作品に、引き込まれること間違いなしです。ちなみに私の好きな作品は「最後の地球人」です。皆さんもぜひお気に入りを見つけてみてください!(るんるん=1年)

『ボッコちゃん』星新一著(新潮文庫、616円)

甘酸っぱい青春時代に浸れる

『クラスメイツ』〈前期〉、〈後期〉森絵都著(角川文庫、560円)

「北見第二中学校1年A組」の1年間を、クラスメート24人のそれぞれの視点でつなぐ連作短編集です。行事、委員会、部活、恋愛、けんかなど、中学生の頃に自分が一度通った道が懐かしく思える物語です。

この短編集のオススメポイントは、人間関係にあります。思春期の中学生といえば、今まで気にしてこなかった人間関係について、少しずつ考え始めるようになる時期だと思います。甘酸っぱく、青春だなと感じ、自分の中学生時代が思い出されます。

この本を読んで、あっという間に過ぎ去ってしまった中学生時代、一生懸命に生きていたあの頃の思い出に浸るのもいいと思います。少し大人な考え方になった高校生が読んでみると、面白いと思います。(りこぴん=2年)

『クラスメイツ』〈前期〉森絵都著(角川文庫、560円)

現役アイドルが綴る少女たちの葛藤

『トラペジウム』高山一実著(角川文庫、680円)

絶対にアイドルになりたい高校1年生、東ゆうが主人公の連作短編小説です。この少女を含めた「東西南北」の美少女4人でアイドルユニットを組もうとします。

主人公は計画を立てて、美少女たちと一から友達になろうとします。「西」の少女の趣味を勉強したり、「東」の少女が所属するボランティア団体に参加したりと、主人公の「アイドルになるため」の努力はすさまじいです。

この小説の作者は、乃木坂46の高山一実さんです。アイドルである彼女だからこそ、「アイドルとは何なのか」という問いに答えてくれます。「東西南北」の少女たちは、葛藤や希望の中でどう生きるのか。高校生である私たちが共感できる部分は多くあります。

単行本の厚みですが、続きが気になり読破できます。気軽に読んでみてください!(七奈=2年)

『トラペジウム』高山一実著(角川文庫、680円)

明智小五郎が想像を超えた難事件を解決

『D坂の殺人事件』江戸川乱歩著(角川文庫、600円)

独特な世界観に飲み込まれ、楽しめる推理小説を紹介します。

短編集なので、隙間時間にいろいろな作品を楽しめます。表題作「D坂の殺人事件」は、人気シリーズ「明智小五郎」が初登場する記念すべき作品です。明智は、さまざまな難事件をずば抜けた洞察力と推理力で解決していきます。

一度手に取ったら、最後まで読みたくなる、想像をはるかに超えた事件と推理が魅力的な作品集です。本をあまり読まず、最後まで読みきる自信がない人にもおすすめの本です。

「文豪ストレイドッグス×角川文庫」のコラボカバーも話題になりました。ぜひ、チェックしてみてください。(おとひめ=3年)

『D坂の殺人事件』江戸川乱歩著(角川文庫、600円)

あの名作、実は短篇で読みやすい

『シャーロック・ホームズの冒険』コナン・ドイル著、石田文子訳(角川文庫、552円)

名探偵シャーロック・ホームズが助手のワトスンと事件を解決していく、あの有名なシャーロック・ホームズシリーズです。

シャーロック・ホームズシリーズは、全て長編だと思っていませんか? 実はほとんどが短編で構成されています。1冊にたくさんの事件が詰まっていて、手軽に読みやすいです。

その中でも、最もおすすめなのが「赤毛同盟」です。

「ぼくにわかるのは、ウィルスンさんがかつてなんらかの肉体労働をされていて、嗅ぎたばこがお好きだということと…」

ホームズに事件の解決を依頼したウィルスンさん。その依頼主までをも、序盤から観察と推理であっと驚かせ、事件を解決に導いていきます。

推理小説に興味がある人、面白い短編小説を探している人も読んでみてはいかがですか?(苺恋=1年)

『シャーロック・ホームズの冒険』コナン・ドイル著、石田文子訳(角川文庫、552円)

いじめとは何なのか

『「いじめ」をめぐる物語』荻原浩、小田雅久仁、越谷オサム、辻村深月、中島さなえ著(朝日新聞出版、1400円)

私がオススメするのは『「いじめ」をめぐる物語』です。

いじめられた側、いじめた側、友だち、教師、家族、さまざまな目線から切り取られた5つの短編小説は読み応えがあります。ヤングアダルトのカテゴリなので、読みやすいです。

特に越谷オサムさんの「20センチ先には」がオススメです。まるでジェットコースターに乗っているような疾走感と緩急ある展開で、アッという間に読み終えてしまいます。加害者と被害者と傍観者の意識の隔たりや、時間感覚の違いが、生々しく描かれています。

冗談から始まったジリがいつの間にか取り返しのつかない犯罪になる…。そもそもイジメとは何なのか。数年前に読んだ本ですが、未だに深く心に残っている小説です。(ひなた=3年)

『「いじめ」をめぐる物語』荻原浩、小田雅久仁、越谷オサム、辻村深月、中島さなえ著(朝日新聞出版、1400円)

有名作家が綴る恋愛短篇

『きみが見つける物語 十代のための新名作 恋愛編』有川浩、乙一、梨屋アリエ、東野圭吾、山田悠介著(角川文庫、560円)

ミステリー作品で有名な東野圭吾さんや、ホラー小説で有名な山田悠介さんなど5名の作家の短編が集まった本です。

どの作品も恋愛が関係しますが、ミステリーやファンタジーなど、いろいろなジャンルになっています。1つの作品は40ページほどで、大変読みやすいです。私はこの短編集を読んで、小説の世界に引き込まれました。

作家それぞれの作風があり、作品によって恋愛の捉え方が違うところがこの短編集のよさだと思います。ぜひ読んでみてください。(あやぴ=2年)

『きみが見つける物語 十代のための新名作 恋愛編』有川浩、乙一、梨屋アリエ、東野圭吾、山田悠介著(角川文庫、560円)

小さな違和感からホラーな展開へ

『意味が分かると怖い話』藤白圭著(河出書房新社、980円)

人は、どのようなときに「怖い」と感じるのでしょうか? この世のものではないものを見たとき、危機を感じたとき、死を感じたとき…。たくさんの恐怖のなかでも、本当に背筋が凍るのは、「人間の本能に触れたとき」かもしれません。

私がおすすめするのは、藤白圭さんの『意味が分かると怖い話』。一見何気ない普通の文章ですが、途中で「あれ?」と小さな違和感に気づきます。それこそが、この作品の核となっているのです。

小さな違和感から、あなたは一体何を見つけてしまうのか。暑い夏、世にも奇妙なホラーで涼しく過ごしませんか?(mizutamaneko=1年)

『意味が分かると怖い話』藤白圭著(河出書房新社、980円)

番外編 じわじわ笑いがこみ上げる奇想天外な一冊

『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』神田桂一、菊池良著(宝島SUGOI文庫、630円)

「この本には『カップ焼きそばの作り方』についてが書かれている。それ以上でもそれ以下でもない。何ら実用性はないし、深い洞察があるわけでもない。始めから終わりまで、本当にそれだけしか書かれていない」

この本の「はじめに」に書かれている以上の内容は、本当にありません。村上春樹からシェイクスピア、Siriに至るまで、幅広い著者の文体を忠実に真似し、ただただカップ焼きそばの作り方が200ページにわたって書かれています。最後には、ペヤングや日清U.F.O.の作り方をそのまま載せてしまうという、奇想天外な本となっています。

疲れているときやなにもやる気が出ないときに、パッとどこかのページを開いて読むと、じわじわと笑いが込み上げてくるのでおすすめです。(Summer=3年)

『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』神田桂一、菊池良著(宝島SUGOI文庫、630円)