華麗に波に乗る鈴木姫七(9月9日、JPSAジャパンプロサーフィンツアー2016ショートボード第6戦サンマリエALL JAPAN PRO=S.Yamamoto撮影)

高校生ながらプロサーファーとして活躍する鈴木姫七(ひめな)(神奈川・小田原城北工3年)。日本代表として国際大会にも出場する若手のホープだ。鈴木の取り組むサーフィン競技のショートボードが、東京五輪の追加種目に決定。五輪出場の夢を胸に毎日、海でストイックに練習している。
(中田宗孝)

冬でも波に乗る

高校2年生の時にプロ資格を取得。2015年、日本サーフィン連盟主催の4大会で優勝し、16年にサーフィン日本代表・通称「波乗りジャパン」のメンバーに選ばれた。日本のみならず、世界のトップ選手ともしのぎを削る、期待の若手サーファーだ。

練習は、自宅から近い海岸でほぼ毎日行う。「海に入らなかった日を思い出せない」と振り返るほど、サーフィン漬けの生活を続けている。放課後は海に向かい、夏は3時間、冬は1時間ほど波に乗る。絶好の波があれば、登校前の早朝6時から海で練習することも。

厳しい練習でメンタル鍛える

現在は、得意技とするリッピング(波の頂上で決める高速ターン)に磨きをかけているという。帰宅後はバランスボールでの体幹トレーニング、ランニングなど体づくりを欠かさない。

試合前は「あれだけ練習したんだから!」と、自分に言い聞かせる。気持ちの面でも強くなるために、厳しい練習を自らに課す。

そんなストイックな姿勢が好成績につながる。今年、最も活躍した新人プロに贈られる「ルーキー・オブ・ザ・イヤー」を獲得した。

家族で新技を研究

趣味でサーフィンをしていた父を追い、小学4年生の時に始めた。サーフボードに難なく立って波に乗れたことで深くのめり込んだ。「幼いころから海が遊び場。大好きな海にずっといられるサーフィンは自分に向いていた」

翌年からは競技大会に出場して本格的に取り組んだ。指導者はいない。練習には父が頻繁に付き添い、母は競技中のビデオ撮影や食事面でのサポートをする。家族で上手なサーファーの映像を確認して、みんなで話し合いながら新しい技を研究することもある。

同じ高校に通う弟の仁(1年)も今年、プロサーファーになった有望選手。「同じ競技をしている弟の存在がいい刺激になる」

8月、サーフィンが東京五輪の正式種目に決定した一報が飛び込み、「現実なのかな?と、ただただビックリ」。五輪出場は大きな目標になるが、本人は冷静だ。「日本代表として出場したい気持ちはある。ただ、今は目の前の試合で良い成績を残していきたい。その先に五輪の夢を描いていけたら」

すずき・ひめな 1998年7月31日、神奈川県生まれ。小田原市立酒匂中卒。2015年、全日本級別サーフィン選手権ガールズクラス優勝、グランドチャンピオンゲームズのウィメンズオープンクラス優勝。157センチ50キロ。

 サーフィン競技  ロングボードとショートボード、ボディボードの3種目がある。多彩な技とスピード感が魅力のショートボードは170〜180センチのサーフボードを使用し、波間をジャンプしたり回転したりして技の難易度などを競う。試合では、3〜5人の審査員が採点する。1人のサーファーが8〜10本競技し、点数の高い2本の合計点で順位が決定。東京五輪ではショートボードのみが実施され、世界各国の男女各20人が金メダルを目指す。