ボート競技のシングルスカル(1人乗り)でインターハイ初出場を決めた彦根東(滋賀)の落合陽乃花(2年)。日本一大きい琵琶湖がある滋賀にいながら、普段は彦根城のお堀という狭い場所で練習している。恵まれているとは決していえない環境だが、それを逆手に磨いてきたのはスタートダッシュ。先行逃げ切りで決勝進出を目指す。(文・写真 白井邦彦)

朝早く登校、集中して勉強

インターハイに初出場する落合陽乃花。中学時代は部員約120人という大所帯の中で技術を磨いたという

彦根東は県内屈指の進学校。勉強と部活の両立は、ボート部を含む運動部の大きなテーマの一つだ。片道約80分かけて通学する落合は、毎朝6時10分に家を出て7時20分に学校到着。そこから約1時間を授業の予習に費やしている。「部活が終わって帰宅したらヘトヘトで勉強に身が入らない。だから、朝に学校でやります」

甲子園出場経験のある硬式野球部では始業前に勉強する「朝勉」が有名だが、落合も朝に集中して部活との両立を図っている。

狭いお堀でスタートを磨く

文武両道だけでなく、練習方法も工夫する。インターハイのボート競技は1000メートルで行われるが、彦根東が練習を行う彦根城のお堀は約500メートルしか直線が取れない。だが、恵まれているとはいえない環境を逆手に前半のダッシュを磨いてきた。

「中学のころは琵琶湖が近く、広い環境で練習をしていました。だから、高校に入って最初のころは狭いお堀での練習に戸惑うこともありました。それ以上に、生徒が自分たちで練習メニューを考えて行動する方が戸惑いましたけれど(笑)。約500㍍しか直線が取れないお堀の中で、さあどうしようかと考えた時に、もともと得意だったスタートを磨こうと思いました」

水の負荷が高くなるようにゆったりとオールを動かし、こぐパワーを高める練習を中心にメニューを組み立てた。こうして生まれたのが、前半にリードを奪ってそのまま逃げ切るスタイルだった。

本番までに体力強化を

0-500メートルの前半を得意とするが、全国トップクラスの選手と勝負するには後半の失速を減らす必要がある。課題は体力だ。

「滋賀県では勝てましたが、インターハイの決勝に残るには後半がポイントだと思います。課題の体力面を克服するために、今は陸上で持久走に取り組んだり、本番と同じ1000㍍の練習ができるように琵琶湖で他校と合同練習をさせてもらったりしています」

本番までに体力を強化し、決勝進出、そして頂点を目指す。

プロフィル

2002年12月17日生まれ、滋賀県出身。中学時代に全国3位。昨年はダブルスカル(2人乗り)でインターハイ出場。167センチ