小松川(東京)ボート部は、国体や全国高校総体(インターハイ)で好成績を収める強豪だ。短時間ながら、質の高い練習に励んでいる。進学校として知られる同校で、部活でも実力が出せる秘訣を取材した。
(文・写真 中田宗孝)
動きそろえる練習が大事
学校から自転車で10分の河川で活動する。平日は約15キロ、週末になると約40キロの距離をこぐ。
ボート競技は、直線水路でのタイムを競う。大会は1000メートルと2000メートルの2種類あるが、練習する河川は急なカーブが多く、試合を想定した練習には不向きの場所だ。そこで、手や足の力だけでボートをこぐ「部分漕」など、各動きに合わせた細かい技術面を磨く練習に多くの時間を割く。
3月に行われた全国高校選抜大会の女子かじ付き4人スカル(5人乗り)で2位に輝いたメンバーの一人、西山輝(ひかり)(3年)は「ボートを力強く、速くこぐだけではなく、スローペースの練習が重要」と話す。「ゆっくりこぎながら、こぎ手4人の体やオールの動きをそろえる練習を重ねています。私は、目の前の人のこぎ始めや、水面にオールを入れるタイミングなどをしっかり見ながら動きを合わせています。スピードを求めるのはそれから」
室内でのウエートトレーニングにも重きを置く。校外の専門トレーナーが部員のフィジカルの状態を細かく計測し、それぞれの強化ポイントを指摘する。測定値は部内でランキング化され、競争心をあおりながら、筋力・持久力のアップを目指している。
勉強がボートにも生きる
進学校としても知られる同校。部長の鴇田祥(3年)は、部活と勉強の両立のコツを「タイムマネジメント」と語る。「得意な数学の勉強には時間をかけず、伸ばしたい英語の時間を増やします。英語の文法や長文問題は授業中にしっかり学べるので、家では英単語を覚えるなど工夫しています」。起床後や授業開始前などの時間も利用して自主勉強に励んでいる。
限られた短い時間で効率化を図った勉強法は、ボートの練習にも生かされているという。「きれいなフォームで、いかに効率良くオールをこげるかを常に考えています。そのためには、こぎ一本一本の精度を高めることが必要。練習中に無駄な時間をつくっていられません」。勉強もボートも細かい演習の積み重ねで実力を伸ばしている。
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<ボート部部長・鴇田の1日のスケジュール>
6:00 起床
6:45 自宅で朝勉強
睡眠で頭をすっきりさせて昨晩のやり残した勉強に励む7:45 登校
8:05 授業開始までの25分間を有効活用して毎日教室で自主勉強
8:30 授業
15:45 ボートなどを準備する
16:30 水上での乗艇練習
18:00前 乗艇練習終了
18:30 道具などの片付け終了
19:00 帰宅
リラックスタイム20:00 夕食。その後入浴
21:00 勉強
何を勉強するのか優先順位をはっきり付けて効率良く。
集中できていないと感じれば、きっぱり止める判断も。
集中力を保(たも)てている時は、勉強時間を延ばすことも。23:00 就寝
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- 【TEAM DATA】 2013年創部。部員34人(3年生14人、2年生8人、1年生12人)。学校から近い「旧中川」で週5日練習。年間15ほどの大会に出場。15年、全国高校選抜大会男子かじ付き4人スカル準優勝、16年、インターハイ女子かじ付き4人スカル優勝。国体5年連続出場。