日本一大きい湖・琵琶湖からカヌー・スプリント世界一を目指す遠藤環太

カヌー・スプリントの海外派遣選手選考会でU-18(18歳以下)日本代表に選ばれた遠藤環太。185センチの恵まれた体と、子どものころから鍛えてきた持久力が武器だ。7月のジュニア世界選手権(ベラルーシ)は自身初の国際大会。インターハイ(全国高校総体)では、カヤックシングル(1人乗り)に出場する。
(文・写真 白井邦彦)

持ち味は持久力

琵琶湖周辺で育った遠藤が高校カヌー界に衝撃を与えようとしている。U-18日本代表として7月28日開催のカヌー・スプリントジュニア世界選手権に初出場し、帰国後すぐにインターハイに出場、9月23日からはハンガリーで開催されるオリンピックホープスにU-16代表として出場する。過密日程だが、遠藤は「持久力には自信があるので」と笑顔を見せた。

185センチの長身は、どこのレース会場でも目立つ。ほかの選手よりも長めのパドルを使い、翼を広げたような漕(こ)ぎ方はスケールの大きさを感じさせる。だが、遠藤の強みはあくまで持久力だ。

現在、カヌー・スプリントの五輪種目は200メートルと1000メートルの2つの距離しかない。遠藤が掲げる「五輪でメダルを取る」という目標は1000メートルを想定している。子どものころから瞬発力を高める筋力トレーニングには目もくれず、持久力を磨く有酸素トレーニングに集中してきた。1000メートルを漕ぎ切る体力をつけないと、世界ではまず勝負にならないからだ。だが、初出場のインターハイには200メートルと500メートルしかない。遠藤には不利だが、「瞬発力がものをいう200メートルで勝負するのはさすがに難しいけれど、500メートルは可能性がある。絶対に勝ちたい」と、初出場初優勝を誓う。

ライバルは同い年

今年の高校1年には、遠藤をはじめ、将来有望な選手がそろっている。いわゆる豊作の年代だが、特にカヤックシングル(1人乗り)500メートルは、遠藤と松代龍治(愛知・南山)のライバル対決が一つの見どころだ。

中学時代から全国の1、2位を分け合ってきた2人。昨年の全国中学生大会では遠藤が敗れて2位に終わっている。だが、今年5月の海外派遣選手選考会では、白波が立つ悪天候の中で2位に入った遠藤がU-18日本代表の座をつかみ、松代は代表から外れている。

元日本代表で遠藤が所属するオーパルカヌーチームの江口貴彦監督は「2人とも1000メートルなら大学生の中でも国内トップクラスに入る実力。肺活量では松代選手の方が上だが、これからも2人は競い合っていくのだと思う」と言う。

遠藤は「龍治くんもインターハイでは勝ちにこだわってくると思うけれど、自分も負ける気はない。しっかり勝って勢いをつけたい」と目を光らせる。高1コンビが、この夏を熱くさせそうな予感だ。

琵琶湖で鍛えた万能性

自然の中で行うカヌー競技は、水の流れ、風や波の影響を受けやすい。特に白波が立つときは、水が艇内に入って沈没する恐れがあり、苦手とする選手も多い。だが、遠藤はその逆。「練習している琵琶湖は波が立つことが多い。小さいころから練習してきたので得意ですし、レースで波が立っていたらラッキーって感じです」と話す。

鍛え上げた持久力、波を味方にできる万能性。この2つを武器に、遠藤は華々しくこの夏を駆け抜けるつもりだ。

えんどう・かんた 2000年7月22日、滋賀県生まれ。仰木中卒。小学2年から競技を始め、中学2年時の全国中学生大会のカヤックペア(2人乗り)で初の日本一に輝いた。妹・帆夏(仰木中2年)もジュニア日本代表。185センチ、76キロ。

カヌー・スプリントとは?
 流れのない河川や湖などを利用し、直線距離の着順を競う競技。使用するカヌーには、パドル(櫂(かい))の両端で水をかく「カヤック」と、パドルの片側のみで水をかく「カナディアン・カヌー」の2種類あり、それぞれに1人乗り、2人乗り、4人乗りの種目がある。カナディアン・カヌーは男子のみ実施。