文化部の全国大会の一つにあたる「全国高校総合文化祭」の書道部門で、昨年、文部科学大臣賞を受賞した衛藤仁胡さん(岡山・明誠学院高校)に、制作の過程を聞きました。
筆を立てて動きを出す
―文科大臣賞を受賞したこの作品について教えてください。
この作品「和泉式部の歌より」は、三大歌人の一人として知られる和泉式部の読んだ歌約100首を「香紙切」を基調に創作したものです。
―どんなことを考えながら制作しましたか?
小さい頃まで佐賀県に住んでいた和泉式部の歌の中に、故郷のことをよんだ歌が残っています。「自然が雄大だ」と詠っていました。歌の意味を一つ一つ調べながら作品を書いている際には、「佐賀県ってこういうところなんだろうなあ」と、想像しながら書いていました。
和泉式部は、情が深くて誰に対しても愛情深い人。その人柄についても思いを馳せました。
―難しかったところはどこですか?
細い線が特徴的な古典です。集中力を切らさずに、全体の雰囲気が変わらないように書くことに苦労しました。普通の筆ではなく、一番細い筆を使って書くんですよ。100首を10セット以上は書いたと思います。
ゆるやかな線を書くにあたって、筆をくるくる回してはいけません。ずっと筆を立てて、毛先が紙に直角に当たるように、常にその動きができるように、集中して書き上げました。
―いつから書道を始めましたか?
お習字は小学校低学年くらいから始めました。書道を始めたのは高校に入ってからです。上達のコツは、作品を書いたら立ち止まり、どこを改善すべきなのか、1回1回きちんと振り返って考えることだと感じています。
(昨年度の取材をもとに作成)