音楽に合わせて全身を使って大きな書を書き上げる第15回書道パフォーマンス甲子園が7月、愛媛県四国中央市で開催され、松本蟻ケ崎高校(長野)書道部が大会初の3連覇を飾った。強さの理由を部員に聞いた。(文・椎木里咲、写真・書道パフォーマンス甲子園実行委員会提供)

3連覇への期待にプレッシャー感じ

同部は2019年に初優勝を果たすと、中止となった20年を挟み、21年、22年に連続優勝し、3連覇を達成した。

迫力ある「墨縁」という文字で、龍の絵の上に「墨でつながった」部員たちの関係を表現。「書を通じ出会った私達」「未来は貴方一人じゃない」などのメッセージもあしらった。戦火に苦しむウクライナ人、コロナ禍で会いたい人に会えず離ればなれの生活を余儀なくされた人へのエールも込めた。

大会で披露した作品。4m×6mの紙に書かれている

3連覇をかけた闘いのプレッシャーは並大抵のものではなかった。全国区のテレビに取り上げられたこともあり、部への注目も増した。元部長の元森未結奈さん(3年)は「『やっぱり次は3連覇だよね』と言葉をかけられることも多く、期待の大きさに自分たちの努力で打ち勝てるのだろうかという不安があった」という。

10日前に作品変更「『新生蟻高』を世に出したい」

そんなプレッシャーを乗り越えたきっかけが、作品の変更だ。大会本番直前である10日前に、一から考え直したのだという。

同校の作品には紙の中心に題字を4文字書き、両端に楷書の文を3~4文配置する「蟻高スタイル」が確立していた。しかし、作り直した作品はあえて「蟻高スタイル」から離れたもので、題字は2文字。両端の文章は崩した字体に変更した。

大きな筆を使い、一筆一筆に力を込める

「先輩を引きついでまねた作品じゃなくて、一から自分たちの思いを持って、苦労して作った作品。これを『新生蟻高』として世に出したいという思いが強く出て、プレッシャーをはねのけるくらいの自信がつきました」(元森さん)

まめに声掛け「顔色で部員の体調がわかる」

元森さんや、書道パフォーマンスの構成や演出を担当した清水美佑さん(3年)が意識して行ったのは、一人一人への声掛けだ。「いつもと違う様子の子、悩んでいそうな子にどう接することができるのかを考えました。毎日の部活の時間に加え、少し時間があるときに『最近部活どう?』って話しかけるなどと気を付けていました」(元森さん)

長い時間一緒にいると、顔色で体調の状態などちょっとした変化でもわかることもあるという。「ちょっと顔色が悪い子がいたら『何かあった? 話聞くよ』『何か困っていることある?』と聞いていました」(清水さん)

チームワークを活かしたダンスを披露

新たな代がスタート 目指すは4連覇

同大会で3年生が引退し、新しい代がスタート。新部長に選ばれた斎藤衣桜里さん(2年)は、書道部に入るために同校への進学を決めた。「先輩方が大会3連覇されたのを一番近いところで見てきました」と話す彼女は、書道パフォーマンス甲子園4連覇を目標に練習に励む。

【部活データ】部員は引退した3年生を含めて47人(3年生10人、2年生16人、1年生21人)。目標は「元気と笑顔を届けられるようなパフォーマンス」。