2020年東京五輪のマラソンと競歩が、暑さを避けるため札幌で行われることになった。開催場所が変更になるのは男女マラソン、競歩の男子50キロと男女20キロの5種目で、開幕まで9カ月を切った段階での変更は極めて異例。五輪のマラソンが開催都市以外で実施されるのは史上初めてだ。

中東のカタール・ドーハで開催された陸上の世界選手権では、深夜スタートのマラソンや競歩でも高温多湿の条件下で棄権者が続出し、真夏に開催する東京五輪を不安視する声が強まっていた。

 

なぜ猛暑の真夏開催なのか

夏季五輪を真夏に行う背景には、巨額の放送権料を支払う米テレビ局の意向がある。また、この時期は五輪以外に世界的なスポーツイベントが少なく、米プロバスケットボールNBAや米プロフットボールNFLとも重ならない。

都内の猛暑は周知の事実だったにもかかわらず、開催都市に事前の相談もなく開催地を変更した手法には反発も出ている。

IOCの「強権」に不満も

競技開催地の最終決定権限を持つ国際オリンピック委員会(IOC)は10月16日、東京都の合意がないまま札幌開催を発表。小池百合子都知事は強く反発したが、その後の東京都、IOCなどの4者協議で決着。小池知事は「合意なき決定」と不満を漏らした。

移転に伴う経費負担が今後の焦点となる。東京都は東京五輪で予定されていたマラソンと競歩のコース路面の遮熱性舗装で既に約15億円を支出、本年度は約8億円を見込んでおり、IOCに補償を求めるかどうか検討するという。

今後の開催地に影響か

近年は地球温暖化や異常気象の影響で夏場の高温が各地で続く。24年夏季五輪の開催地パリでは7月に過去最高の42.6度が観測された。夏季五輪開催地は28年のロサンゼルスまで決まっているが、その後は東南アジアやアフリカの都市が関心を示しているとされ、今後の開催地決定にも影響を与えそうだ。