大会直前まで妥協せず

上宮高校(大阪)書道パフォーマンス部は、全国大会に7年連続出場する強豪だ。毎年夏に行われる書道パフォーマンス甲子園を軸にして活動している。大会が終わると、早速、翌年の大会に向けて始動する。まずはテーマ決めだ。

9月上旬、部員全員がテーマとそのテーマを選んだ理由をコンペ方式で発表。「オリジナリティーがあると思っていても他の人と重なった。他校とかぶらない、誰も思いつかないようなテーマ探しは意外に難しい」(部長の湊ちえさん、2年)。何度もプレゼンをし、意見を出し合ってテーマを決める。

次は書く言葉や構成、音楽や振り付けなど、大会で披露する6分の演技プランを考える。各自1案ずつ持ち寄って意見を交わし、過去の大会やPerfume など人気アーティストのパフォーマンスも参考にしながら全員で練り上げる。

アイデアを固めるのに長い時間がかかり、実際に練習に入るのは例年2月以降だという。

筆を持たない動作だけの練習と、立って書く練習は別々に行う。様子を見ながら通して稽古し、動画撮影もして見え方や動きを確認する。書も振り付けもギリギリまで修正する。

出場メンバーは大会出場が決まってから部内オーディションを行い、身体表現力や書の美しさなどの評価が高い12人が選抜される。「大会に出られなくても、紙面構成も演技も自分たちで作り上げるので仲間意識が高い。その結束力が上宮の強さ」だと湊さんは考えている。

第12回大会では自分への応援を力強く表現(写真提供:書道パフォーマンス甲子園実行委員会)
第12回大会での上宮高校の作品(書道パフォーマンス甲子園実行委員会提供)

オリジナル墨汁で練習

秋から冬にかけては同校文化祭、ショッピングモールや企業のイベントなどでパフォーマンスを披露する。その練習の合間に練習用の新聞紙を水のりで貼り合わせる地味な作業もする。ちなみにパフォーマンス本番では、紙を立てても液が垂れにくい専用の墨液を使うが少々高価だという。そのため墨汁、水、洗濯のりを混ぜ合わせた、顧問の津吾井香奈先生考案の墨液で練習している。

部をまとめる3人

手作りミサンガがお守り

部員たちのマストアイテムはミサンガ。毎年2年生が大会の前に部員全員分のミサンガを作ってお守り代わりに持っていくという。大会が終わると、スクールバッグに付けている。

手作りのミサンガ

学年関係なく教え合う

イベントが少ない時期には楷書、行書、隷書など、手本を見ながら書の基本を繰り返し、学年に関係なく教え合う。前かがみの姿勢や動きながらでも、安定した字が書けるように週1回、肘をついた腕立て伏せの姿勢を取って腰をひねる運動やストレッチを行い、体幹を鍛える。

福冨桃伽さん(2年)は「書と違い、書道パフォーマンスは(制作の)過程を見せられる。動きや表情で自分の思いを強く表現できる」ことが魅力だという。「何が書かれるのか見ている人もワクワクできる。見ている人に感動を伝えたい」(清水安里沙さん・2年)。その思いが日々の練習を支えている。 (文・写真 木和田志乃)

上宮高校書道パフォーマンス部

部活データ

部員2 2 人( 2 年生8人、1年生14人)。活動日は月~木の放課後~18:00。土曜日13:30~18:00。モットーは自主創造。映画「書道ガールズ!!」(2010年公開)に感銘を受けた生徒が中心になって創部。書道パフォーマンス甲子園最高位は6位(2017、19年)2年生ではマネケンのワッフルを食べることが流行っている。「学校の最寄り駅に店舗があるので割と行きます。毎月、味が変わるのが楽しみです」