全国高校総体(インターハイ)陸上の男子110メートル障害決勝が2019年8月8日に沖縄県沖縄市のタピック県総ひやごんスタジアムで行われ、高校歴代3位の記録(13秒91)を持つ村竹ラシッド(千葉・松戸国際3年)が14秒04で初優勝。「ここまで頑張ってやってきたので、1位を獲れて本当にうれしいです」と、その表情に満面の笑みがあふれた。

ライバルの活躍に「負けてられない」

インターハイ陸上男子110m障害で優勝した村竹ラシッド

「今でもあまり思い出したくない」という前回大会の苦い経験が糧となった。1年前のインターハイ決勝で隣のレーンの選手と接触し、「多分、今までで初めてビリでゴールしたと思います」と8位に終わった。「人生で一番悔しかった。当たったことが悔しいのではなく、当たった後、レースの中で自分で諦めてしまったことが本当に悔しかった。今年はそういう思いをしたくなかった」

予選と準決勝も向かい風だったが、「向かい風の試合には慣れているので、あまり気にすることはありませんでした。体力を温存しようといったことは考えずに、最初から突っ込んでいきました」と、準決勝は全体のトップ通過。ライバルと目されていた藤原孝輝(京都・洛南2年)が、5日の男子走り幅跳びで30年ぶりに日本高校記録を更新したことで、「自分も負けていられない」と闘志に火がついたという。

日本トップレベルを目指す

インターハイ陸上男子110m障害で優勝した村竹ラシッド

決勝では不適切なスタートがあり、注意を受けた。フライングで失格かと見る者を一瞬、ひやりとさせたが、村竹自身は「やってやるぞという意気込みが強すぎたのかもしれません」と、涼しい顔で再びスタート態勢を作り直した。2度目のスタートはきれいに決まり、好発進した村竹は、「自信がある」というハードリング動作もさえ、中盤以降、スピードに乗ってライバルたちを引き離した。

今後に向けては「まだ国体やU18日本選手権、室内の試合もあります。U18は大学生もいるので、その中で決勝に残れたらいいなと思います」と話す。日本陸上界は今、男子110メートル障害がかつてないほどの盛り上がりを見せている。「練習をしっかりやって、高山(峻野・ゼンリン)さんや金井(大旺・ミズノ)さん、泉谷(駿介・順天堂大)さんたちについていけるように、日本記録更新も視野に入れつつ、これからも頑張りたい」と村竹。昨季から今季にかけて日本歴代3位までの好記録をマークした3選手の名を挙げたが、そう遠くない未来に村竹も「トッパーBIG3」に割って入っていくに違いない。

(文・小野哲史、写真・幡原裕治)