百舌鳥古墳群 (南西から撮影、堺市提供)

国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関は、日本最大の前方後円墳で宮内庁が仁徳天皇陵として管理する「大山(だいせん)古墳」(堺市)を含む大阪府南部の「百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群」49基を世界遺産に登録するよう勧告した。6月30日からアゼルバイジャンで開かれるユネスコ世界遺産委員会で正式に決まる見通し。

日本から23件目

天皇や皇族が葬られた「陵墓」が世界遺産になるのは初めてで、令和に入り最初の世界遺産となる。登録されれば日本の世界遺産は文化19、自然4の計23件。文化遺産の登録は2013年の「富士山」以来7年連続。

歴史的価値を高く評価

古墳群は4世紀後半から5世紀後半までに築造された49基で構成されている。墳丘の長さ486メートルで「世界最大級の墳墓」とも呼ばれる大山古墳(仁徳(にんとく)天皇陵古墳)をはじめ、425メートルの前方後円墳「応神(おうじん)天皇陵古墳(誉田御廟山(こんだごびょうやま)古墳)」(羽曳野(はびきの)市)から数十メートル規模の円墳もある。勧告は形や大きさも多彩な古墳が造られた歴史的価値を「傑出」と高く評価、適切な保存管理も認めた。

被葬者めぐり論争も

大山古墳の名称を巡っては、学会などでは被葬者が特定されていないとして異論もある。埴輪(はにわ)の年代などから近年は仁徳天皇陵ではないとの説が有力で、教科書では大山古墳や江戸時代の地名を尊重した「大仙陵古墳」の表記が主流となっている。しかし政府がユネスコに提出した推薦書は宮内庁が陵墓として管理していることを踏まえ「天皇陵」と表記、勧告でも名称に関する疑問や修正意見は示されず、このまま登録名称となる見通しだ。