アドリブの書評で会場を笑いに包んだ遠藤君(学校提供)

愛読書をプレゼン

1月、高校生が愛読書の書評で競い合う「マイナビ第5回全国高校ビブリオバトル」(活字文化推進会議主催)の決勝大会が開催され、遠藤駿介君(静岡・富士宮西高校3年)が優勝した。

出場者は、5分間のプレゼンテーションと、2~3分間の質疑応答で愛読書の魅力を伝えた。遠藤君は1年生の時に夢中になって読んだミステリー小説「最後のトリック」(深水黎一郎著)の書評で大会に臨んだ。

反応見て即興でトーク変更

冒頭で遠藤君は、「みなさんは今まで人を殺したことはありますか?」と、客席に挙手を促し、会場をざわつかせた。客席の1人が冗談で手を挙げるも、「ありがとうございます!」と動じることなく、同書を読んだ全員が必ず犯人になってしまう物語の面白さをユーモラスに力説した。

「本番当日、お客さんの年齢層や、僕の発言に対しての客席のリアクションに応じて、即興的に話す内容を考えました。だから練習や地方大会と、話の展開の方法はすべて違います。僕の質問に誰一人、手が挙がらないパターンも想定してました」

プレゼンの途中では、冒頭で挙手をした「客席の殺人者」に再び触れるアドリブも披露し、会場をどっと笑いに包み込んだ。「優勝と同じくらい、お客さんの頷きや笑い声といった良いリアクションが嬉しかった」

米国留学の経験が生きた

昨夏、米国への2週間の留学経験で遠藤君は「自分の好きなことを人に伝える喜びを知った」と言う。自身の野球好きを留学先のホストファミリーに伝えると、大リーグ観戦に招待された。「野球場では大はしゃぎ(笑)。そんな僕を見た他の観客たちが大勢声を掛けてくれて楽しい交流ができたんです」

人と人とのコミュニケーションにおいて、「高い語学力以上に大切なことがある」と気がついた。「相手に自分のことを伝える気持ちや熱量。それを根本に持っていれば、誰とでも心を通わせることができる」

そんな体験をした留学後に、学校の先生からビブリオバトルの参加を勧められ、参加を決めた。「自分の好きな本を多くの人に伝えたい。その気持ちを持って挑んだ。それが、お客さんの心を動かせたんだと思います」(中田宗孝)

――普段、どんなジャンルの本を、月に何冊読んでいますか。

 月に1冊くらい。最近読んで面白かったのは、「残像に口紅を」(筒井康隆著)。文学賞を受賞した本や、スポーツ系のノンフィクションなどを手にとることが多いです。また、同じ本を何度も読み直すこともあります。「金魚姫」(荻原浩著)や「殺戮にいたる病」(我孫子武丸著)は、面白くて繰り返し読んでいます。

――本の魅力は? 本を読むことでどんな力がつくと思いますか。

 読書体験は、新しい自分を見つけるツールだと思う。知識が深まるのはもちろんですが、自分の可能性を広げるものでもある。同じ本を読んでも、読んだ時期や年齢が違えば、読後の感じ方が違ってくるのも魅力です。