苦手だった外角球や左投手に対しても「自分のスイングができるようになってきた」と話す森敬斗

3月23日開幕の選抜高校野球大会に16年ぶりに出場する桐蔭学園(神奈川)。主将の森敬斗(2年)にとって、秋季県大会や明治神宮大会での悔しい敗戦がその後の飛躍の原動力になった。「きつい時こそ楽しく」というメンタリティーで仲間を鼓舞し、厳しい冬季練習を乗り越えた。心も体も大きくなった姿は、まずは春の夢舞台で披露される。(文・写真 小野哲史)

あえて困難な道へ

2年前、出身県外の高校に進んだのは「自分をより成長させたいと思ったから」と明かす。中でも「学校数が多くてレベルが高い。甲子園までが遠い」神奈川県という、あえて厳しいいばらの道を選んだ。今ではすっかり「桐蔭」の名に誇りを持ち、充実の日々を送っている。

感情の波、少ない選手に

昨年10月上旬の県大会決勝では、森自身のエラーもあって横浜に大敗した。試合後、監督との話し合いで「一喜一憂していたら、みんなに悪影響を及ぼしてしまう。感情の波が少ない選手にならないといけない」と考えを改めた。

10月下旬の関東大会では3本塁打を放ち、チームの24年ぶりの優勝に貢献した。だが、翌月の明治神宮大会では初戦で惨敗。関東制覇の喜びに浸っていることはできず、冬季はパワー不足という新たに見つかった課題の克服に努めたという。「ウエートトレーニングで筋力アップを図り、食事は練習中に補食などもとりながら食べる回数を増やすことで、体重は3カ月で5キロ増えました」

体を追い込んだ年末の冬季合宿では、主将としての責任感も磨かれたと感じている。「きつい走り込みでは、みんなより一本でも多く走ることを意識しました。つらい時につらい顔をしても雰囲気は良くならない。きつい時にこそ楽しくやりたいと思って、積極的に声を出し、盛り上げることを心掛けました」

守備はより速く丁寧に

パンチ力のある打撃はもちろん、「より速く、より丁寧に」を徹底してきた遊撃の守備力も向上し、「全てのプレーを見てほしい」と森は話す。もともと走攻守の3拍子がそろった選手として評価は高かったが、ひと冬を越えてさらにスケールアップしつつある。「自分たちがやってきたことを全て出して、一つでも多く勝ちたい」という思いは、間近に控えたセンバツも、最終学年となる春からの戦いでも変わらない。森の高校生活最後となる1年が始まろうとしている。

Q&A 燃え尽きるまで全力

Q 好きな食べ物や音楽はある?

A 肉とすしが好きです。音楽は特定のアーティストというより、いろいろなジャンルの音楽を寮の部屋でよく聴きます。

Q 競技前に緊張しないようにやっていることはある?

A あまり緊張はしません。一瞬だけ緊張することはあっても、スイッチが入って不思議と楽しくなってきます。

Q 好きな言葉、座右の銘はある?

A 「オールアウト」。練習でも燃え尽きるまでやる、全力で全てを出し切るという自分のポリシーのようになっています。

Q オフの日は何をしている?

A だいたい週1日ありますが、治療か生活用品を買いに行くぐらいですね。野球漬けというわけではありませんが、オフのたびに遊びに行くということもないです。

もり・けいと 2002年1月28日、静岡県生まれ。静岡・藁科中卒。小学3年から服織野球スポーツ少年団で野球を始め、中学時代は島田ボーイズでプレー。桐蔭学園では1年夏からベンチ入り。50メートル5秒8の俊足と遠投110メートルの強肩を誇る。右投左打。遊撃手。173センチ70キロ。