8月の全国高校総体(インターハイ)弓道女子団体で、初の準優勝に輝いた三本松(香川)弓道部。準決勝、決勝とも延長戦にあたる競射までもつれ込む大接戦だった。快挙は、試合同様の緊張感と、自ら考えることを重視する、日々の練習から生み出された。(文・写真 藤川満)
各自が課題を意識
「ビシッ」「パーン」。弓から放たれた矢が的に刺さると同時に、「ヨーシ!」と部員たちの気合の入った掛け声が弓道場に響き渡る。次の射手が弓を構えると、再び静寂と緊張感が弓道場を包んだ。
男女合同で行う三本松の部活は、前半に射込み練習(個人練習)、後半に立ち練習(試合形式)というシンプルな構成だ。射込みは、各自が課題を持って自由に射る。数多く射ることで射形(弓を引く姿勢)を整えるのが狙いだ。射形のわずかなズレが結果に響くため、自分のベストな射形を徹底的に体に覚えさせる。
ほかの部員からも学ぶ
弓道は古くから3つの稽古が重要とされている。実際に弓を射る「射込み稽古」、他人が射る姿を見て学ぶ「見取り稽古」、自ら考えて射形を整えていく「工夫稽古」だ。部員たちは練習中、自分が射る番以外は、他部員の射込む姿をじっくり観察したり、コーチにアドバイスを受けながら鏡の前で射形を確認したりと、常に3つの要素を意識して練習に取り組む。
試合同様の形式で練習
立ち練習の「立ち」とはチームのこと。練習は、団体戦と同じ人数(3人か5人)で行い、矢を射るまでの制限時間も試合同様にする。「試合のつもりで緊張感を持って取り組む。これに慣れたら、試合でいつも通りの力が出せます」と主将の菊池志保(2年)=香川・引田中出身=は説明する。
立ち練習の仕上げは競射。サッカーのPK戦のように、団体戦で総的中数が同じ場合に勝負が決するまで各自1本ずつ射る形式だ。練習では1人目が外せば、チームの後のメンバーは射ることができないルールにしている。チーム全員が当てるまで練習は終わらない。この競射特訓でチームの結束が促され、次回の練習への意識も高まるという。
●キープレイヤー
菊池志保(2年) 団体戦では1番手、チームに流れをつくる役目です。絶対に1本目を外さないよう意識して、練習に取り組んでいます。
山田美徳(2年) 私の射形は会(かい)(狙いを定めて静止する状態)が長いので、テンポの良い射込みで、制限時間内に余裕を持てるよう心掛けています。
梁木怜南(2年) 毎回安定した射形にできるように意識しています。私は会の時間が短いのですが、短くても結果を出せるようにしたいです。
川西夏菜(2年) 練習量は誰にも負けないように努力しています。的を射る精度を高められるよう、バランスの良い射形を目指しています。
考えながら矢を射る
水谷明伸監督(57)=写真左
練習は部員の自主性に任せています。「弓道部員である前に三本松高校の生徒であれ」をモットーに、文武両道を心掛け、学業や生活態度などをおろそかにしないよう指導しています。
1957年、香川県生まれ。2005年に監督就任。弓道経験は浅いが、精神面での指導、対外交渉などを担当している。
松村有修コーチ(63)=写真右
矢を射る姿勢は同じでも、部員それぞれ体格や骨格が違います。基本的な射形は指導しますが、自分に合った射形を得るためには、それぞれ自ら考え、工夫する必要があります。そのためには何回も自分で考えながら矢を射ることが大切。試合が近くなると、自分たちで考えさせるため、指導はできるだけ控えるようにしています。
1951年、香川県生まれ。弓道部OBで在校中はインターハイ出場。国士舘大学でも弓道部に所属。2009年にコーチ就任。
- 【部活データ】1957年に同好会として発足。今年のインターハイ時点の部員は男女合計38人(3年生9人、2年生12人、1年生17人)。女子は19人。インターハイ出場は男子団体6回(最高位ベスト16)、女子団体8回。