世界の高校生との寮生活

私は昨夏からアメリカのニューメキシコ州にある「UWC-USA(United World College)」という全寮制のインターナショナルスクールに留学している。UWCとは、教育を通じて国際感覚豊かな人材の育成を目的とする民間教育機関だ。留学期間は2年間を予定している。

ここUWC-USAでは、世界90カ国以上から高校生が集まり、全寮制のキャンパスで24時間をともに過ごす。女子寮と男子寮を合わせて6寮あり、なんとそのうち2寮はキャンパスの敷地内にある城の中だ。実は私はその城の寮に入っている、と言いたいところだが、残念ながらその寮ではない。しかし素敵なルームメイトに恵まれた。

コンゴ人ルームメイトと相部屋に

私のルームメイトはコンゴ人の17歳の女の子。はじめ、コンゴはアフリカ大陸にあるということしか分からなかったが、今ではコンゴについての知識も深まり、毎日が新しいことの発見だ。例えば、相手に察してもらうことを良しとする日本の文化に対して、コンゴの文化は言いたいことがあるならはっきり言う文化だ。異なる文化の人と関わるには、何か意見があるなら言葉で表さないと、何も始まらないのだと気付かされた。

ルームメイトのコンゴ人(右)とその友達のナイジェリア人(左)。出身国の伝統衣装を着て記念撮影

入学早々のハイキングで仲が深まる

厳しいように聞こえるかもしれないが、良い側面もある。例えば自分のやりたいことを伝えれば、みんなが全力で応援してくれるということだ。このことに気付かされたのは、入学して間もない頃に行った、2泊3日のハイキングだった。

UWC-USAでは、新入生は到着して1週間ほどでハイキングに行くのが恒例行事となっている。ハイキングといってもWilderness(原生自然)と呼ばれる人の手の加えられていない山を登って行く。これがなかなかにきつい。例えば、底のないテントで就寝し、排泄は草むらにするといった具合だ。私は日本で登山部に所属していたので、大丈夫だろうと思っていてが、想像以上にきつかった。

思い切って不安を打ち明けた

それだけではなく、このハイキングでも新たな気付きを得た。それは2日目の夜に皆で星空の下語り合っていたときのこと。UWC-USAに来た理由と抱負を話すことになった。シャイな私は、英語力への自信の無さも相まって、自分の番が来るのをすごく恐れていた。遂に私の番がやって来て、自分が今まで多様性の少ない環境にいて、外の世界をもっと知りたくてここに来たことと、英語力のせいで、みんな思うようにコミュニケーションが取れず、このままだと目的が達成できるか不安だと打ち明けた。

今振り返ると、初っ端から弱音を吐いていたのかとも思う。私のこの告白に対して、みんなは「あなたの英語は本当に上手だよ」や「英語力は全く問題じゃない」など励ましてくれた。何か挑戦している人は全力で応援し、自分も常に挑戦し続け、士気を高める。それがUWCの魅力なんだなと思った。

ハイキングで訪れたグランドキャニオン

謙遜しすぎは相手に失礼

そして日本を外から眺めるという経験も、16年間日本で過ごした私にとって与えるものは大きかった。ここでの経験の半分は自国についての気づきであるといっても過言ではない。例えば、私はおしゃれをするのが好きで、アメリカに来てからよく日本の服をほめられる。当初私はほめられるたびに謙遜していた。ある時メキシコ人の友達が少し怒り気味に言われた。「愛、どうして私の褒め言葉をそんなに否定するの? それはほめている人に失礼だわ」。私はハッとした。日本ではほめ言葉に対して謙遜するのが美徳とされているが、ここでは逆なのだ。

国や肌の色は違っても、みんな同じ人間

ここまで文化の違いを述べてきたが、文化が違えど、おもしろいことに人間の心の核の部分は同じだという事にも気づいた。他愛のない話をしたり料理をしたりして盛り上がることもあれば、政治や歴史といった真面目な話をするときもある。毎日90カ国の人々と寝食をともにしていても生活がまわっているのは、人間の根本的な部分はみんな同じだからではないだろうか。(服部愛・2年)