日本の高校生が日米の大学生と合宿しながら学ぶユニークなサマースクール「H-LAB(エイチラボ)」が8月、国内3カ所で開かれた。米国側は名門ハーバード大学の学生が中心。東京での合宿を訪ねると、高校生は、個性豊かな仲間や大学生と交流することで卒業後の進路についての考えを深めていた。 (文・写真 西健太郎)
日米の大学生と過ごす9日間
H-LABは、2011年に東京で初めて開催され、今年は長野、徳島でも開かれた。大学生による実行委員会が、ハーバード大公認の学生団体と協力して企画・運営している。といっても、海外大学進学を勧めるためのプログラムではなく、高校生が普段出会えない人や考え方に触れることで、進路を考えるきっかけにしてもらうことを主な目的としている。
東京のプログラムは8泊9日。8月15日に都内であった開会式には、約300人の応募者から選ばれた79人が参加した。高校生の多くが緊張の面持ちだが、笑顔の大学生と話すうちに表情も徐々に和らいでいった。その日から高校生は、サポート役の日米の大学生約60人と宿舎の旅館で共同生活を送った。
英語漬けだが語学力不問
高校生、大学生は「ハウス」と呼ばれる12のグループに分かれ、寝食や移動を共にする。毎晩、ハウスごとに一日を振り返るミーティングも開くなど、多くの時間を一緒に過ごすことで仲が深まるというわけだ。ハウス制度はハーバード大の寮生活をモデルにしたものだという。
高校生は毎日、研究者やビジネスの現場で活躍する人の講演を聴いたり、「宇宙開発」「社会心理学」「料理の科学」など幅広いテーマの英語による少人数授業「セミナー」を受けたりする。セミナーも、ハーバード大の新入生向け授業がモデル。自分の興味のある分野を探すことができる。参加者は語学力不問で選考されているため、英語が得意でない高校生もいるが、大学生や、周りの高校生が手助けしていた。
本音の話ができた
閉会式前日の夜、宿舎を訪ねると、部屋や廊下のあちこちで高校生と大学生が語り合う姿が見られた。開会式とはうってかわってみんな打ち解けた様子。ある女子生徒は「学校で友達とするのは笑い話ばかりだけれど、ここでしかできない本音の話ができました」とうれしそう。
8月23日の閉会式では、涙ながらに仲間や大学生へのお礼を語る高校生が多くいた。終了後、広島から参加した浅倉颯人君(3年)は「いろんな人の意見を聞くうちに、自分のよいところも悪いところも分かって自信になった。もっといろんな世界を知りたい。東京の大学に行きたい気持ちが強まりました」と話した。青森の商業高校に通う及川皓太 君(2年)は「ありのままの自分が出せて、がむしゃらになってもいいと思えた。将来の目標は青森で名を残すこと。そのために大学で地域活性化について学ぼうと思いました」と意欲を見せた。
H-LABは来年も開催予定。今年の3カ所のプログラムなどは、公式サイトに掲載されている。