「考えるきっかけ」提供

高校生が日本と米国の大学生らと合宿しながら学ぶサマースクール「HLAB(エイチラボ)」が今年8月、全国4カ所で開催された。そのうち東京(8月14~22日)では、高校生80人が参加した。

米国の大学生によるセミナー

この合宿は米国ハーバード大学の寮生活をモデルにしたものだ。約1週間のプログラムでは、「リベラルアーツ」をテーマに、ハーバード大学などの米国の大学生による少人数制のセミナーや、日本の現役大学生や社会人との交流を通して、高校生がしっかり意志や目標を持って進路を選択できるよう、考えるきっかけを提供する。

セミナーは全て英語

文学、音楽、科学など23の幅広いテーマでセミナーが開かれた。セミナーは、高校生を5人前後に分け、米国の大学生が、大学で学んでいることや自分で勉強していることを教えたり参加者と議論したりした。

スイスに留学中の大学生から話を聞く重本祥輝君(左)

セミナーは全て英語で進められるが、参加者の英語力はまちまちであるため、英語に堪能な日本人大学生がセミナーに交じって高校生たちをサポートする。「Diversity(多様性)」のセミナーをのぞいてみると、「どのような時に日本人であると感じるか」をテーマに、英語で意見交換をしていた。参加者の一人、小畑奈津美さん(2年)は「10年アメリカに住んでいたので、英語で表現することには困らないと思っていましたが、普段考えないことを意見するのは(語学力に関係なく)難しかった」と話した。

セミナーは和気あいあいな雰囲気の中、全て英語で進められ、日本人大学生が高校生をサポートしていた

リアルな大学生活も聞ける

HLABの最大の魅力は、普段出会えない人と深く交流できること。土橋朋永さん(1年)は、ハーバード大学で医学を専攻する大学生の話を聞き「専門分野だけでなく、周辺の学問も勉強することが大切」とアドバイスを受けた。将来は海外の大学への進学も考えている土橋さんは「ハーバード大学は、自分とは違う、すごい人たちが通う大学だと思っていたけれど、もっと勉強したら目指せると思った」と目を輝かせていた。

新しい自分を発見

植木陸君(2年)は、HLABが始まった当初は、シャイで周囲と全然話すことができなかったという。しかし「『やらないと意味がない』と思い、後半からは自分から周囲に話しかけるように意識しました」(植木君)。8泊9日の日程を終えて、植木君は「色々な人と出会って、色々な話を聞いて、自分の世界が小さいと感じました。いろいろな人とかかわって、新しい自分も知れたと思います」と振り返った。

9日間のプログラムでは、最先端の研究者やアスリートによる講演や、財界人や国際機関職員との座談会などで、社会で活躍する人とも交流した。

最終日は別れを惜しむ場面が多く見られた

東京の運営実行委員長の塘田明日香さん(東京大学3年)は閉会式で「今の自分に安住せず、他者を尊重しつつも、さまざまな価値観を吸収して自分で考え続け、挑戦してほしい」と高校生にエールを送った。

HLABは東京のほかに長野(8月14~20日)、徳島(8月15~21日)、宮城(8月14~22日)の3カ所でも開催され、合計240人の高校生が参加した。来年も開催予定だ。(堤紘子)