油圧機器メーカー「KYB」が地震の揺れを抑える免震・制御装置の性能検査記録データを改ざんしていたことが明らかになった。不正の疑いも含め、全国の病院やマンション、大阪府庁本館など986件の建物に設置していた。東京スカイツリーにも不正のあった免震装置が使われていた。
揺れが大きくなる恐れ
不正な装置が使われた建物が震度7程度の地震で倒壊する恐れはないが、想定より揺れが大きくなる恐れがあるという。不正は子会社でも行われていた。国土交通省は、免震装置メーカー88社を対象にデータ改ざんの有無を一斉調査、86社から「不正はない」との報告があった。
不正が行われていたのは、油の粘性を利用して建物の揺れを少なくする免震用と制御用の2種類の「オイルダンパー」と呼ばれる装置。検査数値が基準を逸脱した場合に必要のない係数を掛け、合格の範囲内に修正する計画的なものだった。
部品交換、五輪以降に?
KYBは不正の疑いのある装置を全て交換する方針だが、交換用部品の生産が追いつかず、最短でも2020年9月までかかるという。装置は東京五輪の競技施設にも使用されているが、開催までに交換が完了しない恐れもある。
日本原子力発電の敦賀原発(福井県敦賀市)と中部電力の浜岡原発(静岡県御前崎市)の非常時に活用する施設でKYBの子会社が製造した免震装置を使用しており、改ざんされた装置かどうか確認を進めている。
「地震大国」日本で、建物の安全に関わる不正が後を絶たない。不都合な数値を書き換えて顧客をだます行為は、2005年に発覚した耐震偽装事件、15年のくい打ちデータ改ざん事件などで繰り返されてきたが、教訓は生かされなかった。