兵庫高校(兵庫)書道部は、全国高校総合文化祭に出展するなど、実力ある部活だ。7月に開催された第11回書道パフォーマンス甲子園(実行委員会主催)では3位に入賞。「心の持ちようが書道に映し出される」。そんな思いを胸に、真摯(しんし)に書に向き合う姿を取材した。 (文・写真 木和田志乃)
美しい動き目指す
書道パフォーマンス甲子園で披露したのは「山月記」。唐の時代、詩人になろうとして夢破れ、虎になった男が旧友に身の上を語る物語を、音楽に乗せてキレのある所作や組み体操、しなやかな筆遣いでドラマチックに表現した。
昨年12月に題材を選び、書く内容や構成、動きも自分たちで決めてきた。朝や昼休みは書を、放課後にパフォーマンスの動きを練習した。動きは、バレエやダンスの経験のある元部長の佐藤紅音(あかね)さん(3年)らが見応えを意識し、物語の起承転結や男の心理を表現する振り付けを指導した。背筋を伸ばし、視線を斜め上に向けるなど、書いている時も動いている時も美しい動きを目指した。書は大字、詩などのパートごとに書体、字の大きさや字間を合わせる練習をし、様子を見て全体練習を重ねた。
礼儀作法から見直し
予選審査後、部員の家庭の事情などで出場メンバー12人のうち5人が交代。1年生と、最後の出場となる3年生とでは熱意に差があったという。「まずは意識改革から始めようと何度も話し合った」(佐藤さん)。最後は、出られなくなった部員の気持ちを想像し、チーム兵庫としてまとまった。
それでも音楽に合わせて字を書くのは難しく、墨が飛んでしまうこともあった。大会1週間前に保護者や卒業生に披露した時でさえ、動きがそろわなかった。指一本一本の位置など細部まで再確認する一方、書道室に入る時に一礼するなど礼儀作法から見直した。
迎えた本番は「今までで一番輝けた6分間だった。達成感を得られた」(元副部長の岡村咲也加さん、3年)という出来で3位に輝いた。
自分の心映す作品を
書道の魅力は「自分の心が映し出される」(岡村さん)、「オリジナリティーのある作品を作れる」(佐藤さん)ところだという。普段は各自、手本をまねたり書道展に出す作品を制作したりするなど、毎日2時間ほど思い思いに書く。「自分の字を客観的に見られるようになったら上達する」と佐藤さん。展覧会で多くの作品を鑑賞し、部内の批評会で感想やアドバイスを述べ合うなどして批評眼を養う。休憩時間や筆を洗う時、下級生に積極的に声を掛けるなど心を配る。学年に関係なく意見を言い合える関係という。
新部長の新(あたらし)うるるさん(2年)は「先輩たちの築いたものを引き継いで個人作品とパフォーマンスを両立し、先輩たちの成績を超える」と目標を掲げている。
- 【部活データ】 部員18人(3年生7人、2年生4人、1年生7人)。活動は平日放課後と、土・日曜日のどちらか。書道展に作品を出品するほか、2012年度から文化祭や地域の祭りなどで書道パフォーマンスを披露。17年から書道パフォーマンス甲子園に2年連続出場、18年、全国高校総合文化祭の書道部門に出品。
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