全国から選ばれた文化部の高校生が集う第42回全国高校総合文化祭「2018信州総文祭」が8月、長野県内で行われた。演劇部門で総文祭初出場の松本美須々ヶ丘高校(長野)は優秀賞を受賞し、国立劇場(東京)で「優秀校東京公演」にも参加した。(文・写真 中田宗孝、幡原裕治)

下畑さんが人形劇をする場面

演者は1人 声色、表情変え演じ分けた

受賞作「M夫人の回想」は、W.シェイクスピアの戯曲「マクベス」を基に顧問の郷原玲先生がマクベス夫人の視点で創作したもの。

わずか7人の部員で舞台を作るため、今作の演者は1人。舞台では、副部長の下畑美歌さん(2年)が物語の中心となるマクベス夫人はじめ10役もの登場人物を演じる一人芝居が展開された。男性役、女性役、舞台上での会話のやりとりも、声色や表情を変えながら1人で演じ分けた。「私のコミカルな演技に笑ったり、シリアスな演技で会場が緊迫感に包まれたり。私の演技にお客さんが反応してくれた時、大きなやりがいを感じます」(下畑さん)

性別や性格の違う役を巧みに演じ分ける

稽古も1人「寂しい」「プレッシャーがのしかかる」

主演の下畑さんは、高校に入学して間もない昨年5月に演者を引き受けた。中学でも演劇部だったが、1人で舞台に立つのは初めて。「一人芝居への好奇心。あと、自分が1人でどこまでできるか挑戦してみようと」。稽古が本格的に始まると、何役も演じ分ける演技の難しさ以上に、「孤独」が下畑さんを苦しめた。「稽古では常に一人。何度も寂しいと思いました。1人で演じるプレッシャーものしかかって……」。昨年11月の県大会後に部活を辞める決意をするまで精神的に追い込まれていたという。

「やっぱり演技が楽しい」

だが彼女は、県大会を終えた後も舞台に立ち続けた。「本番が楽しくて辞められませんでした(笑)。次の舞台では自分の演技をもっと良くしたい、もうちょっと頑張ろうの繰り返しで、全国まで来ました」。下畑さんの演技の成長ぶりを間近で見てきた部長の奈良遼平君(3年)は、「稽古や本番を乗り越えるたびに、下畑の演技の迫力が増した。特に物語がシリアスになる後半の演技は『怖さ』を感じました」と、たたえた。

下畑さん(左)と部長の奈良君