「地元でプレーするのが夢だった」。09年のドラフトでソフトバンクホークスに1位指名を受けた今宮健太内野手(22)は、プロ4年目となった今年、レギュラーの座をがっちりとつかんだ。「目標をしっかりと持って、すべてにレベルアップする」。今宮が目指すのは日本一の遊撃手になることだ。(文・写真 坂祐三)

4年前、09年の夏、今宮は明豊高(大分代表)の投手としてベスト4をかけ、甲子園のマウンドに立っていた。相手はセンバツで敗れた菊池雄星投手(現西武)擁する岩手代表の花巻東。

この試合、今宮は先発したが2年生の山野にマウンドを譲り、6-6の同点とされた9回表1死からに再び登板した。その最初の打者の3球目に、高校時代自身最速となる球場全体をどよめかせる球速が記録される。154キロ!!

今宮 山野が泣きそうな顔でゴメンと言ってきたので、あいつのためにも負けたくないと思いました。あの時は思い切り腕を振ってもストライクゾーンに行く感じでした。アドレナリンが出たっていうか、気持ちを込めたら出ましたね。春に負けてから、雄星ともう一度やることだけを目標にして頑張ってきました。高校時代に挫折したことはないですが、試合に負けてへこんだ時などは、いつも具体的な目標やイメージをしっかり持って練習してきました。その成果が出たのだと思います

延長10回に勝ち越し点を奪われ、残念ながら春のリベンジはならなかった。しかし、その向上心が今宮を大きく成長させ、この夏の大会をきっかけに大きな転換期を迎えることとなる。

今宮 雑誌とかでも注目されるようになって、はっきりとプロを意識するようになったのは、3年の夏以降だったんです

この年の秋のドラフトで今宮は、地元の福岡ソフトバンクホークスから1位指名を受ける。類まれなる身体能力で高校通算62本塁打、投げては150キロ台の球速で投手としても非凡な才能をひっさげてのプロ入りだった。

今宮 正直、プロとして指名してくれるところがあればどこでも行くつもりでした。でも、1番は地元九州のソフトバンクから声がかかってほしいと思っていました。小さい時から何度も観戦に来ていたヤフオクドームでプレーするのは夢でしたし、父もダイエー時代からの熱狂的なファンでしたから

待望のプロの一員になれた今宮だったが、レギュラーを獲得するまでの道のりは、決して平たんではなかった。高校時代はスラッガーとして本塁打を量産したが、プロの内野手としてやっていくには意識改革が必要だった。

今宮 プロ1年目は、どんどん振って行けと言われました。無意識のうちに振りが大きくなっていたかもしれません。でもレギュラーを獲得するようなった去年あたりから、ランナーをきっちりと進めるバッティングを出来るように意識が変わってきました。適当に球を扱えば大変なことになるし、何と言ってもプロは生活がかかっていますから。1年目の秋に1軍にあげてもらって、試合で使ってもらい初めてエラーした時は、野球人生の中で一番悔しかったのを覚えています。

プロとしての自覚もはっきりと心に刻んだ。3年目でレギュラーをつかみ、今やソフトバンクの2番バッターとして欠かせぬ戦力となった今宮。22歳になる誕生日前日、今年の7月14日のオリックス戦(ヤフオクドーム)では、人生初となるサヨナラ安打も放った。だが、打撃もさることながら遊撃手として守りの意識も高い。

今宮 守備範囲の広さは誰にも負けたくないです。メジャーの遊撃手のように見ていて楽しいプレーをしたいですね。日本一の遊撃手になるために、まだまだ色んな部分でレベルアップしなくてはならないですゴールデン・グラブ賞 今宮は、自分自身を成長させるために常に自らを客観的に見て、どこに向かうべきなのかベクトルもはっきりと持っている。決して周りに流されない意志が最大の強みだ。そして、今の最大の目標は?と聞かれ…

今宮 ゴールデン・グラブ賞を獲ることです 何の迷いもなく、きっぱりと言った。今、やるべきことは何なのか?今宮ならば、あっさりとやってのけるような気がした。