全国から選ばれた文化部の高校生が集う第42回全国高校総合文化祭「2018信州総文祭」が8月7日から5日間、長野県内で行われた。28部門に全国約2万人の生徒が参加。演劇、郷土芸能、日本音楽の上位入賞校は、8月25、26の両日、国立劇場(東京)で「優秀校東京公演」を行った。(文・写真 中田宗孝、幡原裕治)
郷土芸能部門で最優秀賞(文部科学大臣賞)を初受賞した花巻農業高校(岩手)鹿踊(ししおど)り部。鹿踊りとは、鹿をかたどった頭(かしら)をかぶって勇壮に踊り、狩猟で犠牲になった鹿の供養、五穀豊穣(ほうじょう)、天下太平を祈願する伝統芸能。岩手県の無形民俗文化財に指定されている。
太鼓などを含めて総重量15キロの装束をまとって演舞する。本番では、16人の部員が神の使いとされる鹿になりきり、頭を振りながら踊り、謡い、激しく太鼓を打ち鳴らした。
言葉は必要ない
部員24人の同部には、部全体をまとめる部長の伊藤智哉君(3年)、練習の中心となる主将の柏﨑圭祐君(3年)の2人のリーダーがいる。2人は「衝突も多かった」と話す。「ある時、智哉の練習態度を注意しました。それを機に、お互いの気持ちが擦れ違ってしまって……」(柏﨑君)
一方、とがめられた伊藤君は、踊りで主将の思いに応えた。「気持ちは踊りに表れます。ごまかしが利かないんです」。柏﨑君は「智哉の踊りが良くなっていくのが分かった。もう言葉は必要なく、踊りで会話しました」と振り返った。