第42回全国高校総合文化祭(2018信州総文祭)の書道部門で、赤坂満帆さん(北海道・函館中部高校書道部部長3年)の「法亀寺のしだれ桜」が文化庁長官賞に決まった。8月9日、松本市内の部門大会で表彰された。(文・写真 野村麻里子)

文化庁長官賞を受賞した赤坂さん

思い出の寺の桜を表現 

法亀寺(ほうきじ)は、赤坂さんが中学2年生の頃まで住んでいた北斗市にある寺だ。「家のすぐ近くにあったので、桜を毎年見に行っていました。ふるさとの思い出です。作品として書いてみたいと思いました」
 見せ場は「し」の部分。しだれ桜の枝を表現した。「(初めは)勢いよく書いてみたんですが、作品全体にまとまりが出るように表現を調整しました」

苦手な「漢字かな交じり書」にあえて挑戦

受賞作のような「漢字かな交じり書」は赤坂さんが苦手とする分野だ。「今まで避けてきました。でも、こんなに(大会に向けて一つの書を)たくさん練習する機会はないなと思って、あえて苦手な分野に挑戦することに決めました」
 初めは苦戦した。「探り探り書いてみましたが、全然うまくいかなくって……。途中で得意な臨書に変えようと思いましたが……すごく迷って。でも(変えずに)毎日何十枚と書き続けました」

書道ノートが心の支え

苦戦する中、顧問の先生から「書道ノート」をつけることを提案された。「ここはもっと黒く書く」「重くなりすぎない」など、気になったところ、大事だなと思ったことを毎日書くようにした。「うまくいかずに落ち込むときは、ノートを見るようにしました。読むと初心に戻れました」。諦めず書き続ける中で「作品らしくなった」と感じてきた。

書道は個人競技、でも……「嫌われてもいいから教える」 

部長として部をまとめあげている。「書道は個人競技。もっと書きなさい、練習しなさいと言っても、実際は一人一人の問題だからな…と思ったこともありました。でも『自分だけ練習していればいいや』と思わずに、嫌われてもいいから教えたり、注意したりしたほうがいいと考えるようにしています」

始めたのは高校から 「書道パフォーマンスに憧れて」

書道は高校から始めたという。「理由は単純」とはにかむ。「音楽に合わせて大きな筆で字を書く書道パフォーマンスがやってみたくって。袴着てかわいいなあって」
 高校から始めて、トップレベルの力を身につけるにはどうしたらよいかたずねると、遠慮がちに「毎日筆を持つこと」だと明かしてくれた。「書道は字が綺麗とか、汚いとか関係ないんです。どんな風に表現したいかとか(思いを持っているか)で、作品が作れる。もともと自分はうまくないとか関係ありません。練習した人がうまくなると思います」