全国高校総体(インターハイ)陸上の男子砲丸投げ決勝が8月6日に三重交通Gスポーツの杜伊勢陸上競技場で行われ、稲福颯(岐阜・市岐阜商3年)が日本高校記録にあと7センチと迫る18メートル14で快勝。2位に終わった前回から大きく成長した姿を披露した。(文・小野哲史、写真・幡原裕治)

インターハイ陸上男子砲丸投げで優勝した稲福颯

「砲丸は脚から伝わる」下半身を強化

予選の段階から格の違いを見せつけた。16メートル台前半は2人だけ、半数以上が15メートルにも及ばないという中、稲福は17メートル53をマーク。午後の決勝での高校記録(18メートル21)更新を期待させた。3日の男子円盤投げでは、同じ市岐阜商の山下航生(3年)が高校新記録を樹立。それについて、「先に高校新を出されて、正直、悔しかったです」と冗談めかしたが、「自分も」という思いを新たにしたに違いない。

昨年のインターハイは17メートル03で、優勝者にわずか2センチ及ばず2位。18メートルライン近くに砲丸が落ちるビッグショットもあったが、それは惜しくもファウルに終わっていた。さらに強くなるために、この1年はフィジカル強化に多くの時間を割いたという。

「去年から下半身のパワーを鍛えています。砲丸は脚から伝わると考えているので、脚を使うというか、素早く動かすためにウエイトで脚を中心にかなり鍛えました」

体重は10キロ増えて115キロ。太もも周りは75センチになった。技術的な成長と肉体的なパワーアップが奏功し、今季は春先から絶好調だった。4月、5月と順調に記録を伸ばし、6月のアジアジュニア選手権では自身初の18メートル台となる18メートル10。高校歴代記録でも堂々の2位に躍り出た。

インターハイ陸上男子砲丸投げで優勝した稲福颯

目標は高校記録を塗り替え「もっと先に」

決勝の1投目は「焦って急ぎすぎ、最初の入りで固まってしまった。あ、これはダメだなと。バランスが崩れました」とファウルだったものの、2投目で自己ベストとなる18メートル14。会場を大いに沸かしたが、3投目以降でその記録を超えることはできなかった。

優勝という結果にも、稲福は「悔しい気持ちの方が強いです」と複雑な表情だった。

「この大会では高校記録更新と20メートル超えが目標でした。現実的に20メートルにまだほど遠いですけど、高校記録だけはどうしても塗り替えたかった。自分の実力不足です」

 それでも、しばらく経つと、「くよくよしても仕方ないので」と自分に言い聞かせるように笑顔を浮かべた稲福。「U20日本選手権や記録会になると思いますが、高校生の間に高校記録を塗り替えて、もっと先に行きたい。大きな目標は日本人初の20メートル超えです」。スケールの大きな夢が、稲福をさらに成長させるはずだ。