3月の全国選抜高校テニス大会の男子団体で、3年ぶり2度目の頂点に立った四日市工(三重)。強みは、劣勢でもプレーを修正して「立て直せる」こと。その際に重要になる判断力を日頃から磨き、地元インターハイで春夏連覇を目指す。(文・写真 白井邦彦)
「選手が成長」涙の監督
選抜大会はノーシードから勝ち上がった。優勝が決まった直後、四日市工の徳丸真史監督はあふれる涙を抑えきれなかった。インターハイと選抜大会で各2回の優勝経験を持つが、指導者として泣いたのは今回が初めてだった。
「今年のチームには絶対的なエースがいません。正直、選抜大会もベスト8がいいところかなと思っていました。でも、1回戦から一つ一つ丁寧に戦い、選手たちが成長を続けて頂点に立ちました。優勝という結果よりも、彼らの成長が見られたことがうれしかった」
選抜大会での最初の山場は、3回戦の東海大菅生(東京)戦だった。シングルスでエース町田晴(3年)が勝利したものの、続くダブルス、シングルスを落とし、あと1つ負ければ敗退という劣勢に立たされた。だが、次のダブルス、シングルスと連勝し、3−2の逆転勝ちを収めた。
この勝利で勢いがつき、同じ日に行われた準々決勝で大分舞鶴(大分)を下した。翌日の準決勝では、東海大会で苦杯をなめた名古屋(愛知)とのリベンジマッチを制し、決勝では法政二(神奈川)を3−0のストレートで破った。
考える習慣、日頃から
町田は選抜大会優勝の理由を次のように話す。
「普段から、今何をすべきかを考えながら行動しています。今の時期に必要な練習メニューは何か、試合までのコンディションづくりはどうすべきか、試合や遠征に持っていく荷物を誰がどうやって運ぶかなど、あらゆることを3年生で話し合います。日頃から考える習慣をつけることは試合でも生きます。この状況で自分は何をしないといけないのかという判断にも役立ちます。試合中に自分たちで立て直せたことが、結果的に優勝に結び付いたのだと思います」
「考える」をテーマに据える四日市工では、選手たちが日々の練習スケジュールからトレーニング方法、コンディショニング調整などを決めている。監督がいくつかの練習メニューを提示し、その中から選手たちが今の自分たちに必要なものを取捨選択していくスタイルだ。その過程で、選手たちは自然と自分と向き合い、判断力を磨くことになる。
徳丸監督は「コートに入れば、自分で状況を把握して修正しないといけない。必要なのは、状況判断力と決断力。練習メニューを押し付けるのではなく、選択肢を与えて決定権を選手たちに与えているのは、その2つを磨くためです」と説明する。四日市工の強みは、選手一人一人が自立している点にあるようだ。
何でも話し合えるのが強み
ただ「それだけでは団体戦は勝てない」と主将の永井大貴(3年)は話す。「主将に選ばれた時、チームをまとめられるのかという不安がありました。でも、団体戦メンバーの3年生5人が助けてくれ、何でも話し合える雰囲気をつくってくれました。コミュニケーション力が四日市工の強みです」
考えるテニスで狙うのは春夏連覇。地元出身の永井は「中学3年から地元インターハイを意識してやってきました。3年間の思いをぶつけたい」と、白い歯をのぞかせながら決意を語った。
- 【チームデータ】
- 1971年創部。部員30人(3年生9人、2年生9人、1年生12人)。男子団体では2011、14年にインターハイ優勝、15、18年に全国選抜大会優勝。14年度にはインターハイ、国体(三重選抜)、選抜大会を制し3冠達成。