8月7日から5日間、高校生による芸術文化の祭典「第42回全国高校総合文化祭(2018信州総文祭)」が文化庁や全国高校文化連盟、長野県などの主催で行われる。全国から約2万人が参加予定で、25部門が開かれる。そのうち弁論部門に参加する田崎花歩さん(東京・玉川聖学院高等部3年)に意気込みを聞いた。(中田宗孝)
田崎花歩さん(東京・玉川聖学院高等部3年)は、昨年11月の東京私立高校弁論大会で最優秀賞に輝き、弁論部門に出場する。
演題は「私にできること、私だからできること」。4歳から車いすで生活する自らの経験を交えながら、校外学習の一環で訪れた高齢者施設での出来事を7分間にわたり語り掛ける。
2年生の時、担任の先生に勧められて弁論大会への参加を決めた。弁論は初挑戦だったが、学校で受験生の応対をするスタッフの経験があり、「大勢の人前で話し慣れていたので、深く悩まず、やってみようと思いました」
昨年の夏休みに、話す内容を原稿用紙にまとめた。完成した原稿の添削を先生から受けながら、スピーチの練習を重ねた。「まずは、話す内容が相手にきちんと伝わるようにゆっくりしゃべる。そして語尾は、柔らかい印象になるように声のトーンを抑えることを意識しました」
高齢者施設で心のケア
弁論の軸になるエピソードは、1年生の時に訪問した高齢者施設での2日間の体験だ。施設では、食器運びや食事のサポートに手間取り、気落ちした。そんな時、施設職員の間で「気難しい性格」として知られていた車いすの女性高齢者との会話が弾み、互いの心が通じ合うのを感じた。「似た境遇の私だからこそ、おばあちゃんも心を開いてくれた。その経験から、体を自由に動かせない、車いすを使う私でも、誰かの心のケアはできるんだと思いました」
日常生活の中で、移動を手伝ってもらったり、物を運んでもらったりするため、田崎さんは「ありがとう」と発する機会が多いという。「誰かに感謝を伝えるだけでなく、私もたくさん『ありがとう』と言われる行動ができる人になりたいんです」。弁論の内容には、そんな自らの思いも盛り込んでいる。
総文祭に向け、スピーチの言葉の節々に抑揚をつけるなど、表現力に磨きをかける。「(私の弁論を通して)車いすでもこういう生き方ができるんだと感じてもらえたら。そして、障害がある方、私と同じ車いすの方の希望に少しでもなれればいいな」