5月、日本科学未来館(東京)であったトークイベントに篠崎和子教授(東京大学大学院農学生命科学研究科)が登壇。植物が乾燥や急激な温度変化などの「環境ストレス」に耐えるときに働く遺伝子を発見、その仕組みを世界に先駆けて明らかにした研究内容を伝えた。 (山口佳子)
乾燥や温度変化から守る
生物の設計図に例えられるDNAには、子孫に受け継ぐための情報である「遺伝子」と、遺伝子が働くためのスイッチの役目を果たす「シス配列」と呼ばれる部分が含まれる。
篠崎教授は、乾燥時に細胞を守ろうとするタンパク質を作る遺伝子に着目、この遺伝子が働き出すためのスイッチとなる「シス配列」を探し当てた。さらに、この「シス配列」のスイッチをオンにする物質も特定した。この仕組みは、乾燥だけでなく、低温や塩といった環境ストレスに対応する遺伝子にも共通するものだった。
研究成果は食糧難を救う
この研究成果は、遺伝子組み換え植物への応用研究にも生かされ、世界の食糧難を救う技術だと期待される。すでに、インドやブラジルなど、干ばつなどに苦しむ世界各国で、ダイズやピーナツ、サトウキビなどそれぞれの国に必要な植物を用いた共同研究が進み、収穫量30%アップするなどの成果も出始めているという。
篠崎教授は「食糧確保のために戦争が起こることもあるので、世界の平和にも貢献できると思っています」と話した。
遺伝子組み換えによって環境ストレスに耐える植物を生み出す
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